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悪の華 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

団地に住む一人の主婦が射殺された―。彼女の葬儀の日、7年ぶりに顔を合わせた“悪い仲間”たち。
現在は会社社長、ピアニスト、主婦とそれぞれの生活を送っている。その平和を脅かすように、
過去に仲間の1人を殺したあいつが帰って来たのだ!!一方、会社社長の背後に忍び寄る、
刑事と女性警察官の影。1人、また1人と仲間があいつの手で殺されてゆく…
最後に残るのは一体誰!?悪の悲しさと儚い友情を描いた傑作サスペンス。


まさに息をもつかせないジェットコースターのような、赤川作品らしい展開。
平凡な主婦(と思われた)谷沢佳子が拳銃で殺される冒頭のシーンは個人的には
物語に惹き込まれました。

神崎や迫田、綾子らが過去にどんな「悪」をしていたのかはっきりとは描かれません。
しかし、現在の生活はまともでも、物語の端々に出てくる、彼らの行動。
それは、たとえ、<ノラ>の出現がその引き金になったとしても、「悪」そのもの。

一方でそんな神崎に、警察官でありながらそれを裏切り、上司とまで撃ち合いをする
永峰静江という女性は、神崎のことが好きだからこその行動だったのでしょうか。

彼が生きているのは、多くの人の死の上にあることはまちがいありません。
神崎は最後まで生き残りますが、彼にとってそれは幸せだったのかどうか。



悪の華 (角川文庫)

悪の華 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



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女が死んでいる [貫井徳郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

二日酔いで目覚めた朝、寝室の床に見覚えのない女の死体があった。玄関には鍵がかかっている。
まさか、俺が!?手帳に書かれた住所と名前を頼りに、
女の正体と犯人の手掛かりを探すが―。(「女が死んでいる」)
恋人に振られた日、声をかけられた男と愛人契約を結んだ麻紗美。偽名で接する彼の正体を暴いたが、
逆に「義理の息子に殺される」と相談され―。(「憎悪」)
表題作他7篇を収録した、どんでん返しの鮮やかな短篇集。

技巧を尽くした珠玉の短編集と言っていいでしょう。
表題作はタイムリミットサスペンス。と思いながらも、主人公にその焦りがないのがすごい(笑
最後に女の意外な正体や、手帳に遺された手がかりの謎全てが明らかになりますが、
藤村の改心が少しは物語、いや死んでいた女の救いになったでしょうか。
しかし、このタイトルはすごい。そのままと言えばそのままですが、先を読みたくなる作品です。

「二重露出」はなんというか、犯人は殺人を犯してはいるものの、気の毒な作品。
しかしこの犯人「たち」、事前に相談しなかったのか?という所が少し疑問でした。

一方で、公園に住みついたホームレスの区別がほとんど付かないというのは
社会的な存在が無いかのような印象で、社会風刺のような印象を受けました。

「病んだ水」は手紙という形式をとった物語。
誘拐事件を仕組んだ人物の当たりはすぐつきますが、この作品、クリスティの超有名作品への
オマージュかと思いました。

「母性という名の狂気」は複数の視点から描かれる物語。そしてその視点にこそ、
ある大きなトリックが仕掛けられていたのです。収録作中、個人的には白眉。

ラストの「レッツゴー」はこれまでとは全く異なる作風の作品です。
そして、本作をラストに持ってきたのは、描かれるのが日常の謎に近く&ハッピーエンド
の物語だからでしょう。
もっとも鈴木家はかなり緩ーい感じもしますが(苦笑

解説によると、まだまだ多くの短編作品があるようで、
筆者のお考えもわかりますが、ぜひ一冊にまとめてほしい。
私としては貫井先生には短編集第3弾の吉祥院慶彦シリーズの第2弾をお待ちしております!


女が死んでいる (角川文庫)

女が死んでいる (角川文庫)

  • 作者: 貫井 徳郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/08/24
  • メディア: 文庫



女が死んでいる (角川文庫)

女が死んでいる (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/08/24
  • メディア: Kindle版



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教会堂の殺人 ~Game Theory~ [周木律]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

訪れた者を次々と死に誘う狂気の館、教会堂。
失踪した部下を追い、警察庁キャリアの司は館に足を踏み入れる。
そこで待ち受けていたのは、水死・焼死・窒息死などを引き起こす数多の死の罠!
司の足跡をたどり、妹の百合子もまた館に向かう。
死のゲームと、天才数学者が求める極限の問いに、唯一解はあるのか!?


以下、ややネタバレあり。



前作「伽藍堂」でシリーズとして大きな転換点を迎えた<堂>シリーズ。
本作でもその点では見事にやってくれました。
そして、百合子の出生がついに明らかになります。

さらに宮司司やこれまでの事件関係者にまでその累が及ぶことに。
筆者のあとがきはこのあたりの苦悩でしょうか?

今回も数式が盛りだくさんのなのですが、ゲーム理論が全面に登場するなど、
文系の自分でも館のトリックはなんとか理解できました。
おそらく一番恐ろしい「囚人のジレンマ」でしょう。

それにしても教会堂に突然関孝和の名前が登場したのが驚きました。
ついに江戸時代まで遡ったか、と。関の遺した算額、何が記されていたのでしょうか。

ところで<堂>シリーズはあと2作で完結するのですが、
(来月に「鏡面堂の殺人}が書き下ろし刊行)
度々名前が登場する「藤天皇」こと「藤衛」や「The Book」など数々の謎を
残したまま。
司を失った百合子ははたしてどうなるのか。
鏡面堂の殺人も楽しみです。


教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)

教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/09/14
  • メディア: 文庫



教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)

教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/09/14
  • メディア: Kindle版



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図書館の殺人 [青崎有吾]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

九月の朝、風ヶ丘図書館の開架エリアで死体が発見された。被害者は常連利用者の男子大学生。
閉館中の館内に忍び込み、山田風太郎の『人間臨終図巻』で何者かに撲殺されたらしい。
現場にはなんと、二つの奇妙なダイイングメッセージが残されていた! 
警察に呼び出された裏染天馬は独自の捜査を進め、一冊の本と一人の少女の存在に辿り着く。
一方、風ヶ丘高校では期末テストにまつわる騒動が勃発。袴田柚乃たちは事件とテストの二つに
振り回されることになり……。
ロジカルな推理と、巧みなプロットで読者を魅了する〈裏染天馬シリーズ〉第4弾。

青崎さんの<館>シリーズ第4弾。
ダイイングメッセージなど意味がないと断言する天馬。
その言葉の裏には、相変わらず極めて合理的かつ精緻な推理が構築されており、
かつ、犯人である条件を一つずつ、まさに理詰めで構築していく様はお見事。
犯人は今までのシリーズの中でもかなり意外な感じでした。

ただし、天馬の推理は相変わらずですが、今回いきなり警察は天馬を招集したのは
情けない。いやもう物語の都合上なのかもしれませんけど。

柚乃との「仲」も別に双方ともに何も思っていない(?)ので、どうにかなるわけでも
ないのでしょうけど、微妙な感じがもどかしい気もします。
また柚乃が天馬の過去に迫っていきますが、この話はそこまで掘り下げる必要が
あるのだろうかと思います。まだ高校生だしなあ・・・
偏屈な探偵、というのを創り上げた時点で、中々本格+青春ミステリとはいかないものの、
重心を過去よりも柚乃との関係に置いてほしいと思うのは私だけでしょうか。

次の<館>はどこになるのでしょうか?
そろそろ閉ざされた館や孤島の館が登場するのを少し期待しています。


図書館の殺人 (創元推理文庫)

図書館の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: 青崎 有吾
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/12
  • メディア: 文庫



図書館の殺人

図書館の殺人

  • 作者: 青崎 有吾
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/01/29
  • メディア: 単行本



図書館の殺人 裏染シリーズ (創元推理文庫)

図書館の殺人 裏染シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/14
  • メディア: Kindle版



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本日は悲劇なり [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

早朝の教室で女子高生が原因不明の自殺をした。レポーターとして事件の取材をしていた白木は、
少女の死を喜ぶ級友や嘘の発表をする学校に興味を抱き、自殺の原因を探り始める。
調査を進めるうちに、何者かの妨害を受けながらも、少女の遺書を教師が隠したという噂を知る。
真相究明のため遺書を探し出そうとする白木だったが…。少女の自殺の裏に隠された真相とは。
驚愕の結末の表題作他1編収録。

表題作はマスコミの各報道への極めて皮肉のこもった作品。
スクープを見つけるために手段を選ばない白木の行動は自業自得でしょうが、
女子高生の「遺書」をどうすべきだったかは、今なら学校の対応が問われる気もします。

「1/2の我が家」は社宅の妻が自治会長に、会社の夫が課長に、それぞれの生活に
転機が訪れた所から始まる物語。
表題作より最後は救われる話ですが、このラストが赤川先生らしい。



本日は悲劇なり (角川文庫)

本日は悲劇なり (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



本日は悲劇なり (角川文庫)

本日は悲劇なり (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: Kindle版



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世界推理短編傑作集 1 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

欧米では、世界の短編推理小説の傑作集を編纂する試みが、しばしば行われている。
本書はそれらの傑作集の中から、編者の愛読する珠玉の名作を厳選して全五巻に収録し、
併せて19世紀否ばから1950年代に至るまでの短編推理小説の歴史的展望を読者に提供する。
本巻には推理小説の祖といわれるポオから、ドイルを経て20世紀初頭のフットレルまでを収め、
最初期の半世紀を俯瞰する。

そもそも旧版を未読(絶版?)というミステリ好きなのに申し訳ありません。
新版では誰もが知るポオの「盗まれた手紙」とドイルの「赤毛組合」が新たに収録されています。
新潮文庫などでポオの作品は復刊していますし、ドイルはどの出版社でも読めますが、
確かに解説の「画竜点睛を欠く」というのは一理ある。
ミステリをあまり読んだことのない人が本書を手に取るとはあまり思えませんが、
そういう人たちにはこの2作品は良いかもしれません。

江戸川乱歩は奇妙な味に重きを置く作品として「赤毛組合」を挙げていますが、
(謎の構成に重きを置くには「唇のねじれた男」)
まさに正鵠を得るとやはり感じます。このトリック(というか設定でしょうか)は
実に見事だし、読者を物語に一気に惹き込みます。

収録作では、隅の老人が活躍する「ダブリン事件」、<思考機械>の異名を持つ
ヴァン・ドゥーゼン教授の本格密室推理「十三独房の問題」
キャサリン・グレーンの「医師とその妻と時計」が印象に残りました。

隅の老人は恥ずかしながら初読ですが、ずいぶん饒舌だなあという第一印象(笑
ある会話から犯人を導き出すのですが、言われてみれば!と感心しました。
しかし、老人は裁判を傍聴に行っているんですよね。
これは安楽椅子探偵になるのかとちょっと思いました。

「十三独房の問題」はあまりにも見事すぎる作品。
完全密室を思考機械のドゥーゼン教授がいかに脱出するのか。読み応え充分です。

「医師とその妻と時計」はハウダニットの先駆的作品ではないでしょうか。
盲目の医師、そしてその妻の感情が非常に繊細かつ詳細に描かれており、
登場人物は少ないながらも、物語に惹き込まれました。

第2巻もそろそろ読み始めます。



世界推理短編傑作集1【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集1【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/07/12
  • メディア: 文庫



世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)

世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)

  • 作者: ウイルキー・コリンズ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1960/07/24
  • メディア: 文庫



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恐怖の報酬 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

こんなはずじゃなかったのに――。平和な日常が反転する傑作短編集。

大切な来客の駐車場を確保しそこなった昭子。年下の課長から毎日嫌がらせを受ける定年間際の柳井。
公園でガラの悪い男たちに絡まれ、一緒にいた彼氏に置いていかれた友子。
アイドルと共に強盗の人質になった銀行員・明美。
窮地に陥った4人はそれぞれ差しのべられた救いの手を取ろうとするが……。
信じていた日常に裏切られた人間の、もろさとしたたかさを容赦なく描き出す、傑作短編集。

ホラー文庫らしい作品群です。
その中でも救いがある話は第3話「最後の願い」
ラストも最後にまた娘に会えて、会田もうれしかったのではないでしょうか。
もちろん、危害を加えようとしたことは後悔しているかもしれませんが。

第1話は主人公の昭子がプラスマイナスゼロと言っているように、
良いこともあれば悪いこともある、で終わらないところがすごい。
何かと頼りにしてきた三橋とのドライブから、一気に別の物語になったかのようです。
しかもラストは昭子までもがその世界に慣れているところが怖い。

「使い走り」は寺岡の自業自得な話の気もするのですが、
星野貞代が柳井が亡くなった直後に自殺していたという衝撃の事実と、
それが明らかになっても、課の誰もが感動して受け容れたという事実、
さすがに背筋が寒くなりました。感動的にも捉えられるし、恐怖とも捉えられる、
なんとも言いがたいラストです。

一番後味が悪いのは最終話「人質の歌」
とにかく救われる人は誰一人いません。
そして、強盗人質事件にかこつけて悪巧みをする輩たち。
途中、強盗犯とは違う殺人犯が登場するという、犯人のバトンタッチが行われるのは、
極限状態だからなのかと思いきや、実は最後でまた明かされる意外な真相。
とにかく誰一人として救われない物語です。


恐怖の報酬 (角川文庫)

恐怖の報酬 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



恐怖の報酬 (角川文庫)

恐怖の報酬 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: Kindle版



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悪意の夜 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

夫を事故で喪ったアリスは、亡夫の書斎でミス・ラッシュという知らない女性の名が
書かれた封筒を見つける。そこへ息子のマルコムが、美女を伴い帰宅した。
美女の名前はラッシュ……女性が去ったのち、封筒も消えていた。彼女は何者で、
息子に近づいた目的、夫の死との関連は? アリスの疑惑と緊張が深まるなか、ついに殺人が……。
迫真のサスペンスにして名探偵による謎解きミステリでもある、ウィリング博士もの最後の未訳長編。

マクロイという作家は序盤の叙述で、読者を物語に惹き込むのが抜群に上手いと思います。
本書も、夫が遺した封筒、書かれていた女性の名前、息子のガールフレンド、
そして「彼女は私の娘ではない」というミス・ラッシュの父親の発言等々・・・
主人公のアリスがパニックになるのは必然ですね。

この辺りは前回読んだ「牧神の影」にプロットが似ています。
序盤の展開、容疑者の少なさ、夫(伯父)が最後にしていた仕事・・・

ただし、「牧神」と違うのは、ウィリング博士が登場するのと、物語の終幕でしょうか。
個人的にはもう少しミス・ラッシュには見せ場を与えて欲しかったなと思います。
その辺りの話が夫の手記(封筒に入っていた書類)で明らかにされますが、
もう少し彼女に語らせても良かったなあと。

ウィリング博士の最後のセリフ「それでいいのです」が印象的でした。




悪意の夜 (創元推理文庫)

悪意の夜 (創元推理文庫)

  • 作者: ヘレン・マクロイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/08/22
  • メディア: 文庫



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今日の別れに [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

押しに弱く、彼氏の坂西と別れられず困っていた歩美。今日こそはと坂西に会いに行く途中で、
憧れの先輩・南田からデートの誘いの電話が入った。有頂天になった歩美が
その勢いで坂西を強く拒むと、傷ついた坂西は車の前に飛び出しはねられてしまう。
南田とのデートの時間が迫っていた歩美は罪悪感を覚えながらも坂西を見捨て立ち去るが、
そのことが思わぬ形で歩美の人生を歪めていく…。表題作他2編収録。

元々角川ホラー文庫で刊行されていたので、ホラー色がかなり強い作品です。
その中で唯一、赤川作品の少年少女の冒険譚とも言えるのが「角に建った家」
この話で一番気の毒だったのは、家が建った土地の地主でしょう。
いきなり絵に閉じ込められます(苦笑

表題作は主人公の歩美の行動から、家族やその周囲までが不幸に見舞われる話。
坂西や三田智子の恨みの深さは理解できますが、最後に坂西(と智子?)が見せた
優しさが少し救われます。
しかし妹が亡くなった直後の歩美の行動は確かにちょっと・・・

「あなた」は過去に犯罪を犯して逃げた「故郷」に、別人別名として
そして成功者として戻ってきた「町田国男」の物語。

表題作と違い、貞子は「町田」(増田)を恨んではいません。
しかし、増田自身、最後に自らに終止符を打ち、かつ改めて貞子と一緒に旅立つのです。

ラストはかなり意味深な終わり方です。
しかし、良子もひとみも真実を知ることは無いでしょう、それが救いです。



今日の別れに (角川文庫)

今日の別れに (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



今日の別れに (角川文庫)

今日の別れに (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: Kindle版



今日の別れに (角川ホラー文庫)

今日の別れに (角川ホラー文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/01/10
  • メディア: 文庫



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赤い博物館 [大山誠一郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

警視庁付属犯罪資料館、通称「赤い博物館」の館長・緋色冴子はコミュニケーション能力は皆無だが、
ずば抜けた推理力を持つ美女。そんな冴子の手足となって捜査を行うのは、部下の寺田聡。
過去の事件の遺留品や資料を元に、難事件に挑む二人が立ち向かった先は―。
予測不能なトリック駆使、著者渾身の最高傑作!

「密室蒐集家」に続く文春文庫の大山誠一郎さん第2弾。
ドラマ化していたようですが、観た記憶がない・・・
以下、ややネタバレ。




本作の中には2つの系統作品が入っています。
緋色冴子が単なる推理だけでなく、現実にも事件を解決するパターン。
「パンの身代金」や「「死が共犯者を別つまで」「死に至る問い」の3編がそれに該当。

一方、あくまで緋色の推理に留まり、真相がどうなのかは読者へ任せるパターン。
「復讐日記」「炎」がこれに該当。

前者では「死が共犯者を別つまで」がオススメ。
これは予想以上に予想外の流れでした。しかも見事に真犯人を挙げているところも良い。
ただし、入れ替わりやなりすましがここまで上手くいくかどうか、ちょっと難しい気も。

後者はいずれもオススメなのですが、
「日記」が必ずしも本当の事を記載していない事や、高見が守ろうとしたのは誰なのか、
という点から「復讐日記」。
「炎」は幸せな家族を襲った悲劇の裏に、実はその幸せは創られたものだったのではないかという
どこかホラー要素も含んでいて、個人的には好きな作品。
しかし、緋色の推理から考えるに、果たして妊娠をそこまでごまかすことが出来るのかどうか。
この辺りはちょっと弱い気もします。

ところで緋色冴子がキャリアなのに異動せず、8年間も閑職にいるのか。
兵藤首席監察官と同期で、事件を捜査してくれと非公式なお願いに来たり・・・
「密室蒐集家」は主人公が完全に時空を超えた存在であるから良いのですが、
本作は、次作以降でその辺りの背景まで描いてくれるとうれしいですね。



赤い博物館 (文春文庫)

赤い博物館 (文春文庫)

  • 作者: 大山 誠一郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/09/04
  • メディア: 文庫



赤い博物館 (文春文庫)

赤い博物館 (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/09/04
  • メディア: Kindle版



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自殺行き往復切符 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

19歳の女子大生・真鍋今日子は、恋人木村の甘い囁きを頼りに、心中をほのめかす書き置きを残し、
失踪した。翌日、今日子のハンドバッグと靴だけが海辺の崖で発見された。
警察の急報を受けた両親が現場へ向かったが…。その後、海岸で発見された今日子らしき女性は、
記憶を失っていた。一方、木村は新たに知り合った金持婦人を殺し、金と宝石を奪う。
そして次々と起こる殺人事件…。天才詐欺師が企む罠。ピカレスク・ロマン。

殺人犯かつ女性を生まれながら虜にし、詐欺を働く「木村久夫」「池上照夫」の物語。
また彼に魅了された女性たちの物語でもあります。

大宮司美沙の行動力には驚きますが、それ以上に彼女の父親・大宮司泰治がかなり
強烈な人物です。
娘のためなら、正義も道徳も関係無い、それこそ殺人まで犯すという、しかも
巨大な権力を持っているという。どう見ても悪役なのですが、どこかそう思えない所も
あるのがまた不思議。
そして、物語の最初に「彼」に騙された真鍋今日子の父・真鍋圭介も実は
最後の最後で大宮司と似た顔を見せます。
波子(今日子)の共同殺人をあらゆる手を使って無罪にするという、圭介の態度は
大宮司の姿に重なるのです。

ラスト、果たして美沙は「彼」に逢えたのか。物語はその結末を描かず終幕します。

他にもいくつか気になる謎を残しつつだったので、ちょっと気になりました。
真鍋の被書で極めて有能な金田はどうして警視庁捜査一課を辞めたのか。
大沢の妹の亜矢子と婚約解消したのはなぜか。
(再会したとたん、恋人関係に戻るので、余計に気になりました。)

「彼」はなぜ子どもにとても優しく、家族について語るとき、別人になるのか。
この辺りはあえて謎として残したという気もしますが、どうでしょうか。

それにしても、最後まで「彼」の本名は明らかにならず、主人公の名前すら
わからないという極めて希有な物語でした。


自殺行き往復切符 (角川文庫)

自殺行き往復切符 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



自殺行き往復切符 (角川文庫)

自殺行き往復切符 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: Kindle版



自殺行き往復切符 (角川文庫 (6050))

自殺行き往復切符 (角川文庫 (6050))

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1985/04
  • メディア: 文庫



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錆びた滑車 [若竹七海]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

女探偵・葉村晶は尾行していた老女・石和梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれる。
ミツエの持つ古い木造アパートに移り住むことになった晶に、交通事故で重傷を負い、
記憶を失ったミツエの孫ヒロトは、なぜ自分がその場所にいたのか調べてほしいと依頼する―。
大人気、タフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。

以下、ややネタバレ。



上から人が降ってくる不運に始まり、今度は自分が落ちるで終わる。
どこまでも不運すぎますが、落ちた後、真の犯人ともいえるべき人物と対峙する葉村は
かっこいい。
「さよならの手口」と同様、ある老女の尾行するという小さな依頼から、
大きな事件へと繋がります。
ただし「さよならの手口」と違うのは、この依頼そのものが仕組まれた面があるところでしょうか。
とはいえ、葉村は依頼を通じて知り合ったミツエとヒロトと暮らし始め、
不便さや不満を散々露わにしながらも、最後に彼らと過ごした時間を素晴らしい瞬間と
振り返りつつも、彼らを救えなかった自分を無能な探偵と恥じるのです。

そして彼女を取り巻く環境にも再び変化が。
これまで住んでいた「スタインベック荘」の取り壊しが決まり、
アルバイト先の<白熊探偵社>の空き部屋に住むことになります。
良くしてくれた大家岡部巴や、同じ店子の佐々木琉宇とも別れることに。
(姪の飛鳥市子は登場人物の中でも真犯人の次に嫌なヤツですが)
しかし、当麻警部との腐れ縁が切れない以上、佐々木琉宇とも実は切れない縁に
なってしまったかもしれません。彼女に彼氏ができたことにより(笑

ヒロトの事故や「牧村ハナエ」の存在、そして麻薬・・・様々に張られた伏線
を徐々に徐々に回収していく物語も読み応えあり。

ここからは余談。
葉村晶も「さよならの手口」で13年ぶりに復活しましたが、
元々「プレゼント」で彼女と微妙な共演をしていた小林警部補も
「御子柴くんの甘味と捜査」で久しぶりの復活を果たしました。

その後小林警部補は勇退しますが、葉村晶にはこれからも
我々を楽しませてほしいと思います。


錆びた滑車 (文春文庫)

錆びた滑車 (文春文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/08/03
  • メディア: 文庫



錆びた滑車 葉村晶シリーズ (文春文庫)

錆びた滑車 葉村晶シリーズ (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/08/03
  • メディア: Kindle版



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冒険入りタイム・カプセル [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「三十年。タイム・カプセル。―そして、殺人」父の栄一郎が始めた三題噺。
再婚相手の光代とハネムーンの途中、三十年前に埋めたタイム・カプセルを掘り出すため
高校に立ち寄るらしい。同行を命じられた一人娘の倫子は「殺人」というお題に戸惑う。
そこへ「三十年前のことで話をしたい」という電話が。
さらに一緒にタイム・カプセルを埋めた同級生が父娘の目前で刺され…。

赤川次郎の王道作品でありながら、主人公の倫子よりも、
父親の栄一郎(含めた同級生と当時の教師)の青春物語かなあと感じました。

30年前に生徒だけでなく教師からも絶大な人気があった高津智子先生が殺害される。
彼女を殺した犯人は誰なのか。
タイムカプセルには何が埋められているのか?

栄一郎たちの前に現れた、彼の同級生・石山の娘「を名乗る」石山秀代、
倫子の新しい母親となった羽佐間(小泉)光江など、
倫子の周囲も一筋縄ではいかない人ばかり。

ラストで一気に大団円に持っていくのも、さすが赤川先生。
最初に書いた、栄一郎の青春物語というのは、実際のところ、
彼がタイムカプセルから殺人まで、ほぼ全ての謎を知っていたからという面も大きいです。

謎めいた女性である中山久仁子をもう少し活かして欲しかったなあという印象と、
大団円ではあるのですが、その反面、かなりの駆け足になってしまったかなとも思います。

今月は角川文庫で多くの赤川次郎作品が復刊しましたので、そちらも随時
更新していきます。


冒険入りタイム・カプセル (徳間文庫)

冒険入りタイム・カプセル (徳間文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/09/07
  • メディア: 文庫



冒険入りタイム・カプセル (角川文庫)

冒険入りタイム・カプセル (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2001/09/14
  • メディア: Kindle版



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誰も僕を裁けない [早坂吝]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「援交探偵」上木らいちの元に、名門企業の社長から「メイドとして雇いたい」という手紙が届く。
東京都にある異形の館には、社長夫妻と子供らがいたが、連続殺人が発生!
一方、埼玉県に住む高三の戸田公平は、資産家令嬢・埼(みさき)と出会い、互いに惹かれていく。
そして埼の家に深夜招かれた戸田は、ある理由から逮捕されてしまう。
法とは? 正義とは? 驚愕の真相まで一気読み!エロミスと社会派を融合させた渾身作!!

エロミスを定着させた早坂先生の功績は大きい。
上木らいちのエロさが伝わる文章がまた良いのです。

本作の舞台となる逆井邸。この図が登場するのですが、確かに異形の館。
で、らいちも言っているように、明らかに「回る」だろうと思われる館(笑)

この「回る」館を使ったトリックより、犯人がアノ最中に殺人をしていたことの方が
遥かに驚きました。

そして「上木らいち」と「戸田公平」という2人の視点で交互に語られる物語が
果たしてどんな繋がりなのかが、最後に明らかにされるのですが、
これが中々唸らせる結びつきです。
上記館の回るトリックは、実際には、殺人だけでなく、戸田公平の人生をも
左右するトリックだったことがわかります。

そしてこの結びつきこそ、作中でのらいちと推理作家をめざす一心の会話にあります。
「本格と社会派の融合」、「本格のルールが現実社会のルールをも浸食する」。
この台詞は、そっくりそのまま本作に当てはまります。
戸田公平の人生を変えた現実社会の法律というルールと、
戸田公平が経験したまさに本格ミステリさながらの殺人事件。
そしてそれが明らかになった時、本書のタイトルの真の意味も明かされるのです。

本格と社会派の融合、古くて新しい課題にエロを入れつつ、見事なアプローチで
完成させた傑作です。



誰も僕を裁けない (講談社文庫)

誰も僕を裁けない (講談社文庫)

  • 作者: 早坂 吝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: 文庫



誰も僕を裁けない (講談社文庫)

誰も僕を裁けない (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: Kindle版


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片桐大三郎とXYZの悲劇 [倉知淳]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

元銀幕の大スター・片桐大三郎(現芸能プロ社長)の趣味は、犯罪捜査に首を突っ込むこと。
その卓越した推理力と遠慮を知らない行動力、濃すぎる大きな顔面で事件の核心にぐいぐい迫る。
聴力を失った大三郎の耳代わりを務めるのは若き付き人・野々瀬乃枝。
この絶妙なコンビが大活躍する最高にコミカルで抱腹絶倒のミステリー!

エラリー・クイーンのドルリー・レーン悲劇4部作のオマージュ。
「ぎゅうぎゅう詰めの殺意」(「Xの悲劇」)では「満員電車」という繋がりを持たせます。
「極めて陽気で暢気な凶器」(「Yの悲劇」)では、不思議な凶器、という繋がりを。
「途切れ途切れの誘拐」(「Zの悲劇」)では、これは死刑宣告というタイムリミットと
誘拐という、ある種のタイムリミットが繋がりなのかと思いましたが、違うかな・・・

最後「片桐大三郎最後の季節」(「レーン最後の事件」)は、・・・

「ぎゅうぎゅう詰め」では、犯人を指摘するまでには当然至らずですが、
スーツやコートのずれ、というのは赤川次郎作品でも何かあったなあと思った次第。
ただし、被害者が結局どういう服装で電車に乗っていたのかの描写がないため、
中々難しい気もしますが、読者とすると、犯人はすぐわかるのでは(苦笑

2作目はウクレレがなぜ凶器に使用されたのかというのが最大の読ませどころ。
ただ作品内ではこれがほとんど活かすことができていません。
むしろ、猫丸先輩(猫丸先輩シリーズ)ならば、もっと魅力的な「仮説」を提示できた
と思ってしまいます。

本作最大の欠点はお手伝いさんが受けた電話でしょう。よくよく考えるとこれは明らかに
不自然です(特に乃枝が時系列を表にまとめたあたりでよくわかる。)

「途切れ途切れの誘拐」は、これは閲読注意なのかもしれません。
最初の選挙戦との関係や殺人と誘拐の主従逆転というのはお見事。
しかし、誘拐事件をする必要性があったかどうか微妙な所ですね。

「片桐大三郎最後の季節」は本書所収では快作。
「レーン最後の事件」を見事に逆手に取っています。
ということは、シリーズは続くのかと少し期待してしまいます。


一番気になったのは、この片桐大三郎、誰がモデルなのでしょう?
片岡千恵蔵さんかなーとも思いましたが、
小御角勲監督との映画なんて話からは三船敏郎さんのイメージが強いですね。
途中出てくる「仁木もり介」は三木のり平さんでしょう。

レーン悲劇4部作へのオマージュ探しだけでなく、次々と登場する往年の時代劇スターの
名前から、それが現実世界の誰なのかを想像するのも、本書を楽しむ一つの方法ですね。


片桐大三郎とXYZの悲劇 (文春文庫)

片桐大三郎とXYZの悲劇 (文春文庫)

  • 作者: 倉知 淳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/08/03
  • メディア: 文庫



片桐大三郎とXYZの悲劇 (文春文庫)

片桐大三郎とXYZの悲劇 (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/08/03
  • メディア: Kindle版



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逃げる幻 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

家出を繰り返す少年が、開けた荒野の真ん中から消えた―
ハイランド地方を訪れたダンバー大尉が聞かされたのは、そんな不可解な話だった。
その夜、当の少年を偶然見つけたダンバーは、彼が何かを異様に恐れていることに気づく。
そして二日後、少年の家庭教師が殺される―スコットランドを舞台に、
名探偵ウィリング博士が人間消失と密室殺人が彩る事件に挑む傑作本格ミステリ。

ついに創元推理文庫のウィリング博士シリーズにも手を出しました(笑
先月に『悪意の夜』が出たので、それ以前に刊行されたものをと思い、まずは本書を。

少年の消失、そしてその後起こる殺人事件の密室。これらは実のところ
そこまで大きな問題ではありません。

本書のすごさは、少年がなぜ家出を繰り返すのか?途中明かされるダンバー大尉の真の目的。
本書が書かれた第二次世界大戦直後という戦争の傷跡と極めて深く関連させ、
それでいて、実は最初から叙述の中に犯人を当てられる要素をちりばめていること。

そしてそれを隠すかのように、舞台とされたスコットランドのハイランド地方に伝わる
様々な言い伝え。これが実にミスリードに繋がっていて、かつ物語のおどろおどろしさを
醸し出す絶好の舞台となっています。

ウィリング博士は本当に本当に終盤にしか登場しません。
それでいて、読者へのヒントをダンバーに話す形で一つ一つ丁寧に看破していくのは圧巻。
ただし、登場が遅いためか、ウィリング博士シリーズにしなくても良かった気もするという。

『悪意の夜』も楽しみです。


逃げる幻 (創元推理文庫)

逃げる幻 (創元推理文庫)

  • 作者: ヘレン・マクロイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/08/21
  • メディア: 文庫



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落ちる/黒い木の葉 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

過度な自己破壊衝動を持つ男は最愛の妻を得ることで生きる意味を見出したかに思えたが、
主治医の男と妻の関係に疑念を抱く(「落ちる」)。うだつの上がらない万年平行員の宿直当番中に
銃を持った強盗が現れた。その意外な顛末とは?(「ある脅迫」)。
サスペンスからユーモア、本格推理、叙情豊かな青春までバラエティに富む昭和ミステリの傑作短篇集。単行本未収録作「砂丘にて」収録。

本書はちくま文庫から刊行が続いている、日下三蔵氏編による結城昌治氏、仁木悦子氏などの
名短編集に続くシリーズ。
失礼ながら私は多岐川恭氏を全く知らず、本書を購入して初めて知りました。

まず冒頭の「落ちる」から驚かされます。
強い自己破壊衝動を持つ主人公は、妻・佐久子と度々来訪する医師・長峰の仲を疑い
続けているものの、長峰のある告白から始まる彼のデパートでの行動には驚愕。
係員に告げる最期の台詞も印象的。

「ヒーローの死」は自らが「ヒーロー」であることにこだわり続けた、悲しい男の物語。
「ある脅迫」は、誰が脅迫者になるのか、その後の脅迫の内容まで、そして脅迫の仕方までも
中池又吉の描かれる&想像する性格から鑑みて、相当おもしろい作品です。
笑い話にまで持っていった次長の力量は見事ですが、詰めが甘かったですね。

「黒い木の葉」は青春小説でありながら、少女の死をめぐる謎を解くミステリでもあります。
少年と少女だけでなく、少女の母親と少年の父親である画家の両者の「青春」を
振り返る物語にもなっている、と感じました。

「砂丘にて」は今でいうどんでん返しのミステリ。「その五」から始まる日下の語りは必読。

他にも自殺願望を持つ者たちの中に、自らをどん底に突き落とした男を招いた「俺は死なない」
一人の女性をめぐって争う「ライバル」等々・・・書いていくときりがありません。

これを期に多岐川恭先生の作品群が復刊していくことを望みます。


落ちる/黒い木の葉 (ちくま文庫)

落ちる/黒い木の葉 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/07/06
  • メディア: 文庫



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晴れ時々、食品サンプル-ほしがり探偵ユリオ [青柳碧人]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ショッピングサイト《ほしがり堂》を経営する深町ユリオは、筋金入りのマニアックなコレクター。
古い家電や顔ハメ看板など、ガラクタにしか見えないモノに価値を見出し、
お宝として売り捌く彼は事件を解決する名探偵でもあった!
カウボーイグッズを身につけた被害者が落馬めいた死を遂げた事件、
判じ絵ネタをする芸人宅で発見された被害者の傍にあった道具に隠されたメッセージ、
食品サンプルコレクターの告別式で食品サンプルがばらまかれた謎など全5編。
ほしがりの兄と苦労人の妹が、お宝をめぐる事件に挑む!

早くも第2弾。作者のあとがきにもありますが、楽しんで書かれているようで、
こちらも早く読めてうれしい。

本作では前作より、コレクター・骨董品を集めると言うより、
より探偵としての活動に行脚しているのではと思われる事多数(笑
名探偵としても活躍している、なんて噂まで飛び交う始末ですから。

「告別式に、食品サンプルの雨が降る」は
殺人も血なまぐさい事件も起こらない、しかしそれでいて一番奇妙な事件。
なぜ食品サンプルが巻かれたのか。香典が「一旦」紛失したのはなぜか。
妹のさくらも兄の影響か名探偵ぶりを発揮する所も見所(読み所)です。
しかし、何度も何度も出棺を繰り返したのは気の毒です・・・

「ほしがり vs 捨てたがり」は完全犯罪になるところを、ユリオのまさに快刀乱麻の
推理がお見事。呆気にとられる刑事たちも見物です。
しかし、表題の捨てたがりとの決着はついてませんが。

「神の手、再び」はラストの松下刑事の切り返しが素晴らしい。
かくいう松下刑事は、ユリオを信奉する唯一の刑事さんかも。

一番コレクター・骨董品的な知識が活用されたのが「馬のない落馬」でしょうか。
死体のカウボーイの姿が(マニアから見て)おかしいというユリオの指摘から、
事件を解決に導いていきます。
思わぬ援軍の鑑識の藤谷さんは次作への登場を希望します!


晴れ時々、食品サンプル (ほしがり探偵ユリオ) (創元推理文庫)

晴れ時々、食品サンプル (ほしがり探偵ユリオ) (創元推理文庫)

  • 作者: 青柳 碧人
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/07/12
  • メディア: 文庫



晴れ時々、食品サンプル ほしがり探偵ユリオ (創元推理文庫)

晴れ時々、食品サンプル ほしがり探偵ユリオ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: Kindle版



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行き止まりの殺意 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

祐子の母は、父を裏切って家出をした。それを苦にして、父は自殺してしまう。
一緒に暮らしていた祖母も病死。たった一人取り残された祐子は、母への憎しみを募らせ、
それはやがて殺意に!凶器を携え、母の住むアパートへと向かうが…。(表題作)
他に、オフィスを舞台にした「消えた会議室」、ホラーの秀作「犬」など、
サスペンスあふれる傑作を揃えた短編集。

表題作は主人公の祐子が母親を殺しに行く途中で出会う、一組の夫婦が良いです。
奥さんとの会話、そしてラストに描かれるナイフの描写、
祐子が思いとどまった思い止まった大きな要因ではないでしょうか。

「真夜中の電話」は怒濤の展開かつスピーディなコメディのようなお話。
コメディなどというと、主人公の由紀子に怒られそうですが・・・
見舞われる災難はとても恐ろしいのですが、どこか抜けているんですよねえ。

「あの人は今・・・」は良い人しか出てこない作品。
ラストがまた素晴らしい。

右へ行ったらどうなるか、左へ行ったらどうなるか、人生生きていれば
そういう選択は多いかもしれませんが、「わかれ道」の主人公が選んだ
その選択は過激そのものです(笑
『三毛猫ホームズの安息日』でも片山晴美が「人違い」だかでとんでもない事に
巻き込まれますが、本作も同様。違うのは主人公・美也子の性格が一変したことでしょうか。

「犬」と「旧友」はともに犬がメインのホラー作品。
とはいえ、前者は確かになぜ犬が生きていたかはホラーですが、同情を禁じ得ません。
後者は完全なホラー。ラストもまた悲惨です。

最もミステリ色が強いのが最終作「消えた会議室」
主人公の明子はまさに赤川作品の王道主人公。
ちょっと頼りなそうな雰囲気のササニシキではなく佐々木警部、ではなく警部補は
実のところかなり優秀です。
存在しないはずの<第七会議室>やこの「七」という数字の読みの特殊性を
見事に活かした快作です。

ところで来月の角川文庫は異常に赤川次郎作品が復刊されるのですが、
何かあるのだろうか?


行き止まりの殺意 新装版 (光文社文庫)

行き止まりの殺意 新装版 (光文社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/07/11
  • メディア: 文庫



行き止まりの殺意 新装版 (光文社文庫)

行き止まりの殺意 新装版 (光文社文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/07/20
  • メディア: Kindle版



行き止まりの殺意 (光文社文庫)

行き止まりの殺意 (光文社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1988/04
  • メディア: 文庫



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白の恐怖 [鮎川哲也]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

軽井沢の豪奢な別荘「白樺荘」に、莫大な遺産を相続することになった四人の男女が集まった。
だが、生憎の悪天候で雪が降りしきり、別荘は外とは連絡が取れない孤立状態になっていた。
そこで、一人、また一人と殺人鬼の毒牙にかかって相続人が死んでいく…。
本格推理の巨匠が描いた密室殺人。発表から六十年近い年月を経て、初めて文庫化される幻の長編!

以下、少しネタバレがあります。



事件の内容はともかく・・・星影龍三は全くブレません(笑
これこそ、私が見たかった星影龍三だ。
しかも本人はわずか数ページにしか登場せず、一言も言葉を発さず。
それでいて、相変わらず態度がやたらでかく、嫌みな感じがするという(笑
そして「りら荘」同様、佐々弁護士の手記のみから事件の真相を看破するという
神業も見せてくれます。これぞ星影龍三の真骨頂ではないでしょうか。
もっともその推理をしゃべるのは田所警部なのですが(笑



雪の閉ざされた山荘というテーマに真正面から挑んだ御大の作品。
手記という体裁を取っているからか、佐々弁護士の人間観察が面白いです。
なので「白樺荘」へ着く前までの方が好きかもしれません。
ただこの事件の前置きともいえる箇所にも、もちろん事件解決の大きな
ヒントが隠されているのですが。

本書最大の難点は、このトリックがこの短期間で成り立ち得るのかどうか、でしょう。
篠崎ベルタと丸茂助手を殺害した時点で、犯人にとってかなり危ない状況には違いないのです。
(山荘にラジオのみというのが幸運?)
そして山荘に大雪で閉じ込められる、というのも偶然の産物に過ぎず、
もし大雪が降らなければ即座に見破られていたことでしょう。
この点は犯行をどのように行うつもりだったのか?という事も関係してきます。

また、わざわざ一カ所に集めずとも、相続人の連絡が来た時点で、
そこへ出向き、各人を殺害する方が、犯人にとっては遙かにリスクが低いのです。
解決編のところで、この危ない状況を回避する手立てを、ずいぶん前からしていたことが
述べられるのですが、この点を完璧に行っていれば、このトリックは成就したんですけどね。

あとがきにもありますが、改稿された未完の長編「白樺荘事件」は
遺産相続人探しが交代されているようですが、それ以外で、鮎川先生はどこをどう変えようと
していのか、それが読めないのは残念ではあります。
探偵役は星影龍三続投は間違いないと思いますが(笑




白の恐怖 (光文社文庫)

白の恐怖 (光文社文庫)

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/08/08
  • メディア: 文庫



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翳ある墓標 [鮎川哲也]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

トップ屋集団「メトロ取材グループ」の杉田兼助は、同僚の高森映子とともに
銀座のキャバレーで取材をするが、協力した映子の友人のホステスが屍体となって発見された。
警察の自殺判定に納得がいかない映子は独自に調べ始めるが、彼女も殺害されてしまう―。
本格ミステリ界巨匠の異色作品。
読み継がれるミステリファン必読の短編「達也が嗤う」を特別収録。

鮎川御大の作品は光文社文庫から出ている「完璧な犯罪」「アリバイ崩し」などの
ベストミステリー短編集、さらには「朱の絶筆」や創元推理文庫で復刊した
「りら荘事件」(後に角川文庫でも発売)などの星影龍三シリーズをこれまで読んで来ました。

本書はノン・シリーズものではありますが、今月8日、あの幻の名作「白の恐怖」が
やはり光文社文庫から発売されたのを機に、同時購入しました。
以下、ややネタバレあり。



ノン・シリーズものですが、個人的には快作です。
いくつものアリバイトリックと、鬼貫警部のアリバイ崩しを彷彿とさせる構成。
そのアリバイ崩しもアンフェアでなく、論理的思考で説かれていくある種の美しさ。

個人的に好きなのは、途中の謎の転換です(という表現で良いか微妙ですが)。
元々、映子は友人であるホステスのひふみの自殺に納得できず、他殺の疑いを持って
事件の取材(捜査)を始めますが、その映子が殺害され、「探偵役」が同僚の杉田へ
バトンタッチされます。

映子も杉田もひふみの恋人に行き当たり、彼女の死の真相を聞かされます。
ところが、ここで物語は終わらないのです。
映子はその先に何を見つけたのか?そしてなぜ彼女が殺されたのか?
ひふみ殺害の犯人から、映子殺害の犯人へと謎が引き継がれるのです。
(大きな意味ではひふみの殺害犯と映子殺害犯は同一ではありますが、あえてここは独自解釈)

本書は異色作、通俗小説とありますが、そんなことはありません。
読者へは謎を解く鍵は全て示され、多重のアリバイトリックなど、まさに本格推理。

あえて難点をいえば、犯人が明らかになるところでしょうか。
ここがあまりにもあっけなかった。突然の終幕といった感じでしょうか。
真犯人、というのが良いのかわかりませんが、やや蛇足だったような気もします。

ところで、御大のあとがきでは、ある事情によりプロットを大幅に変更することになった、
とあるのですが、これはどういう事情だったんでしょうか。
そして元々はどんなプロットだったのかとても気になりました。

もう一つの収録作「達也が嗤う」は犯人当て小説。
元々は日本探偵作家クラブの例会で朗読された作品で、後に小説化したもの。

本作についてはもはや語るまでもなく傑作です。
この短編の中に、これでもかと謎とそのヒントを詰め込み、あくまでもフェアに
事件を解決できるという素晴らしさ。
その表題作までヒントが隠されているというこだわりはさすが本格の鬼。

余談ですが、犯人よりもある人物が男だという事の方が難しいと思います(笑

次は「白の恐怖」を読みます!



翳ある墓標 (光文社文庫)

翳ある墓標 (光文社文庫)

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/02/10
  • メディア: 文庫



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牧神の影 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

深夜、電話の音でアリスンは目が覚めた。それは伯父フェリックスの急死を知らせる内線電話だった。
死因は心臓発作とされたが、翌朝訪れた陸軍情報部の大佐は、伯父が軍のために戦地用暗号
を開発していたと言う。その後、人里離れた山中のコテージで一人暮しを始めたアリスンの周囲で
次々に怪しい出来事が…。暗号の謎とサスペンスが融合したマクロイ円熟期の傑作。

ヘレン・マクロイ、久しぶりです。
なんといってもちくま文庫からの刊行でしか、今のところ読んでいないので・・・
(そのうち創元推理文庫も読み始めるかもしれませんが)
「二人のウィリング」に続く2作目になります。

本作は原題が「Panic」なのですが、これを「牧神の影」と邦訳したのはお見事。
主人公のアリスンが、山深い、人里離れたコテージで過ごす描写と相俟って、
物語に読み手をどんどん引きずり込みます。

本書は暗号小説としては一級品ですが、この暗号を解読しようと試みた読者は
どのくらいいるでしょうか(苦笑
一方で、アリスンに忍び寄る人物は、当初は暗号が目的かと思われるのですが、
途中から、伯父の死=他殺という事を隠すために近づいているという、
物語当初から見えていた事実が、物語途中でアリスンの眼前に現れるというのも
とてもおもしろかったです。

そして暗号を説く謎が番犬にもならないというアルゴスの存在も非常に大きい。
訳者あとがきにもありますが、実はアルゴス、番犬の役割をこなしてます。
この記述が実に巧妙なため、犯人の存在をうまくごまかしているのです。

ベイジル・ウィリング博士は登場しませんが、充分楽しめる傑作。オススメです。


牧神の影 (ちくま文庫)

牧神の影 (ちくま文庫)

  • 作者: ヘレン マクロイ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/06/08
  • メディア: 文庫



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奇跡の男 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

バスの転落事故で一人だけ生き残った男が、今度は袋くじの特賞に大当たり。
そんな強運、あり!?(奇跡の男) 小さな飲み屋「糀屋」の客が死に、
なぜか警察に被害者の香典が送られてきて……(狐の香典)。“卯の花健康法”や“健脳法”など、
珍妙なことばかり思いつくナチ先生が殺された。雪に残された足跡が唯一の手掛かり?
(ナチ式健脳法)など、ユーモラスで奇想天外な極上ミステリ短編集。

泡坂妻夫復刊第4弾。全て未読作品。楽しいひとときです。
表題作「奇跡の男」は御大デビュー作「DL2号機事件」を彷彿とさせる快作。
鉱山を掘るという小ネタが最後まで引っ張られるのがかなりおもしろい。

「ナチ式健脳法」は雪の足跡トリックをある驚愕の謎解きで解決する怪作。

本作オススメは「狐の香典」。この作品、起きた事件の真相そのものより、
密造酒(笑)を作る店の主人・五兵衛のある種の計画。
これは今の世の中にかなり当てはまることで、見事に皮肉が効いています。

未読の方、ぜひともご一読あれ。


奇跡の男 (徳間文庫)

奇跡の男 (徳間文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/05/02
  • メディア: 文庫



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別れ、のち晴れ [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

最近、父親の様子がおかしいと高校生の宏枝はあやしんでいた。
別れた母と年に一度「離婚記念日」と称して会っているのだが、その日が近いからなのか? 
それとも仕事のトラブル? 宏枝は顔色を読むことにかけては天才なのだ。
一方、弟の朋哉も母親が落ち込んでいると連絡してきた。調べてみる必要がある? 
子たちは親を想い、親は子を想う。家族の再生を描く珠玉のホームドラマ!


殺人事件は起こりません。そして登場人物に一人も悪人は居ません。
それでもちょっとした日常、誰にでも起こりうることを、
こうして物語にできるのはさすが赤川御大。

強いて言えば、宏枝と朋哉が実に逞しいことでしょうか。
「子子家庭」シリーズまではいきませんが、本作のこの二人も負けてません。

そして彼らは江梨や市川との「出会い」を通じて、大人だけが持つ葛藤や苦しさを
学んでいきます。

徳間文庫にはこれからも復刊を望みます!


別れ、のち晴れ (徳間文庫 あ 1-100)

別れ、のち晴れ (徳間文庫 あ 1-100)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/07/06
  • メディア: 文庫



別れ、のち晴れ (徳間文庫)

別れ、のち晴れ (徳間文庫)

  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/07/06
  • メディア: Kindle版



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迷蝶の島 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

太平洋を航海するヨットの上から落とされた女と、絶海の孤島に吊るされていた男。
一体、誰が誰を殺したのか?そもそもこれは、夢か現実か?男の手記、関係者の証言などで、
次々と明かされていく三角関係に陥った男女の愛憎と、奇妙で不可解な事件の、驚くべき真相とは!?

少し間隔が空いてしまいました。
河出文庫泡坂妻夫復刊第3弾は良質なサスペンス。
メインの登場人物はわずかに3名。
山菅達夫の手記、捜査官・関係者の証言、そしてトキコの告白という3章構成。

個人的に、達夫の「勘違い」はどう考えても気の毒ですが、
本人も認めている通り、それなら最初に訂正すべきだった。

メインの登場人物は3名と書きましたが、ほとんど達夫とトキコの物語ですね。
両者がそれぞれ仕掛けたトリックで、両者とも亡くなります。
達夫の死の謎は蓋を開けてみれば、ああーと思うものですが、
これは極めて難しい。
一方のトキコの死は完全に予想を超えていたものでした。

ところで、河出文庫泡坂妻夫復刊が終わり、今度は徳間文庫から復刊が。
うれしいことです。



迷蝶の島 (河出文庫)

迷蝶の島 (河出文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/03/03
  • メディア: 文庫



迷蝶の島 (河出文庫)

迷蝶の島 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/03/06
  • メディア: Kindle版



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完全犯罪 加田伶太郎全集 [福永武彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

資産家が住まう洋館に届いた英文の脅迫状と、奇怪な密室殺人――
迷宮入りとなった十数年前の事件に四人の男が推理を競う傑作短編「完全犯罪」。
著者である加田伶太郎は、日本推理小説の爛熟期に突如として登場、
本作を始めとする幾編かの短編小説をして斯界に名を知らしめた――。
その謎に包まれた正体は、文学者・福永武彦が創りだした別の顔であった。
精緻な論理と遊戯性を共存させ、日本推理小説史上でも最重要短編集のひとつに数えられる、
文学全集の体裁を模した推理小説集。

作品群は1950~60年代初頭に書かれたものですが、
そんな古さを感じさせない見事な探偵小説です。

本シリーズや各作品群の解説は本書の鼑談や法月綸太郎先生による
解説を読めば十分にわかります。
そこでそれ以外で、私が完全なる妄想で思ったことを含めつつ(苦笑)。
始まりの「完全犯罪」は安楽椅子探偵+多重解決、さらにいえば過去の事件という点から、
すでにこの段階で福永氏はシリーズ名探偵という存在へややもすれば批判的に
見ていたのではないかと感じました。
つまりこれは法月氏も評論した「後期クイーン的問題」の第一、
「作中で探偵が最終的に提示した解決が、本当に真の解決かどうか作中では証明できないこと」
を意識しているのではないか?ということです。
多重解決+過去の事件のため、名探偵・伊丹英典の推理が真実なのかどうか、
実際のところはわかりません。
あくまでもその場に居た人たちを納得させるに留まっているとも考えられます。

この趣向は、読んで行くと急に変化球が出てきたと実際驚いた「眠りの誘惑」でも同じです。
ここでも依頼者からの手記から伊丹氏は推理を構築しますが、それもまた推理の一つであり、
真実とは伊丹氏自身も少し匂わせています(物的証拠はなく、心理的証拠ばかりですのくだり等)。

そしてこの2作は法月氏も指摘する、伊丹氏は安楽椅子探偵だと自認ながら、
実のところ、全8編中、上記2編のみしか安楽椅子探偵ものがないという所も面白いところ。

名探偵を道化師化させた(にみえる)「湖畔事件」も本格のパロディかつお遊び的な
色彩が強く、これもまた、名探偵の存在そのものへのアイロニーなのかもしれません。

とまあ、名探偵云々はそろそろ置きまして・・・
本作愁眉はなんと言っても「赤い靴」でしょう。
まさに集大成といって過言ではありません。
手記による推理から始まり、怪奇色が濃い奇妙な話や謎、機械トリック、
そして探偵が犯人にしかけるトリックによる事件解決と、これでもかと
詰め込んでいて、それでいて極めて完成度が高い作品です。

「完全犯罪」も不気味な脅迫状から始まる物語は、シャーロック・ホームズものを
思わせますし、読者を惹きつける作品になっています。

一方で、「温室事件」や「電話事件」は、探偵はともかく(後者についてはもう探偵家業は辞める
と言ってますが)、読者へはやや後味が悪い作品かもしれません。
謎そのものは面白いのですが、このあたりは法月先生の解説をぜひご一読あれ。



完全犯罪 加田伶太郎全集 (創元推理文庫)

完全犯罪 加田伶太郎全集 (創元推理文庫)

  • 作者: 福永 武彦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/04/12
  • メディア: 文庫



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演じられた花嫁 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

女子大生・塚川亜由美と親友の聡子は休日に演劇を楽しんでいた。切ない物語に涙を流していると、
カーテンコールで主演俳優がヒロインの佐々木伸子にプロポーズ!会場は沸き立つが、
幸せそうな二人の背後には、ある女の冷たい眼差しが―。
さらに、伸子の元には謎の脅迫状が送られて!?
大人気ユーモアミステリー。(「花嫁は時を旅する」併録)

花嫁シリーズも現在刊行されているまででなんと31作。
息の長いシリーズとなりました。

本書では表題作より「花嫁は時を旅する」がオススメ。
土砂崩れで亡くなった松井夫婦が実は大きな事件を鍵を握っているのですが、
この夫婦、物語では一切登場しません。
しかしながら、関係者や犯人の話を聞いていくと、
実に奇妙で興味深い(といっては失礼かも)夫婦です。
むしろ彼らはどういう生活をしていたのか逆に気になってしまう・・・

そして本書両編にいえるのは、亜由美以上の活躍を魅せるのが
愛犬のドン・ファン。
赤川作品の中でも三毛猫ホームズの次に大活躍かつ主役を食うレギュラーメンバーです。

殿長部長刑事、相当に優秀なんだから、そろそろ警部補昇進とかどうでしょうかね?



演じられた花嫁 (実業之日本社文庫)

演じられた花嫁 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2018/06/06
  • メディア: 文庫



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夜の終る時/熱い死角 警察小説傑作選 [結城昌治]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

実直な刑事の徳持が捜査に出たきり行方不明になった。捜査係は総力をあげて事件の解決に乗りだすが、彼とやくざについての噂が同僚のあいだに疑念を呼び起こす。そんな中、徳持はホテルで扼殺死体となって見つかる(『夜の終る時』)。二部構成の鮮やかさと乾いた筆致で描かれる警察組織の歪みのリアルさは今なお色あせない。日本推理作家協会賞を受賞した警察小説の金字塔に4作の傑作短篇を増補。

ミステリ短編傑作選に続く第2弾。
解説の日下三蔵さんによると、第1弾の売上が良く、今回刊行に至ったとのこと。
やっぱ本は買わないといけませんね。
今は読むことが中々難しい作品などを、こうした形で再刊してくれるのは有り難い。

警察小説傑作選とありますが、郷原部長刑事三部作はやはり同じ刑事を主人公としていても
別扱い。あれはやはりユーモアミステリ的区分になるのでしょう。

日本推理作家協会賞受賞の「夜の終る時」は、一人の刑事が本書に戻らない所から
始まります。
第一部と第二部は連続しているようで、第一部が事件を追う刑事たちと各刑事たちの物語。
第二部は犯人の語る事件の真相。そして結末。
シャーロック・ホームズのの「恐怖の谷」を思い出しました。

最後の解説で選評が掲載されているのですが、平野謙氏の選評が印象的。
「文学的に人間が書き込んである」という、推理小説、本格ミステリと呼ばれる
分野に対して言われがちな言葉。時代を感じさせますね。
一方で松本清張氏の選評はさすがだなあと思いました。
「氏がいろいろな方法を試みるのは、その方法を証明させる」と
本格からハードボイルド、さらには警察小説と、一つのジャンルに留まらない、
結城昌治氏の持つ魅力を見事に言い得ています。

「殺意の背景」はその動機と終わり方が見事。
「熱い死角」は刑事の妻と警察のブラックリストに載るいわくある男との関係を探る
刑事の物語。疑心暗鬼が続く中、最後の結末には驚かされます。

第3弾、ぜひお願いします。



夜の終る時/熱い死角 (ちくま文庫)

夜の終る時/熱い死角 (ちくま文庫)

  • 作者: 結城 昌治
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/04/10
  • メディア: 文庫



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シャーロック・ホームズの蒐集 [シャーロック・ホームズ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

1927年、アーサー・コナン・ドイルによる最後のシャーロック・ホームズ活躍譚「ショスコム・オールド・プレース」が《ストランド・マガジン》に掲載されて以降も、この不滅の人気を誇る名探偵の贋作は、数多くの作家によって描かれてきた。本書はそれらに連なる最新の傑作である。大英帝国を縦横無尽に駆け巡るホームズと相棒ワトスン博士の〈語られざる事件〉を、世界有数のホームズ・ファンが愛と敬意を込めて作品化した、最高水準のパスティーシュ。六編を収める。

日本屈指のシャーロキアンである北原さん執筆によるホームズパスティーシュがついに登場!
各編の最後に、どの「語られざる事件」なのか記述してあるのが、かっこいい。

オススメは「結ばれた黄色いスカーフの事件」と「ノーフォークの人狼卿の事件」
前者は依頼人には辛い思いをさせましたが、ホームズの解決が実に鮮やか。
そして「オレンジの種五つ」を彷彿とさせる謎めいた犯人からの脅迫も不気味です。
ホラーテイストの強さでは後者。
「バスカヴィル家の犬」や「這う男」を彷彿とさせる不気味さと奇妙な謎から、
ホームズがいかに合理的に謎を解いていくのかが楽しめる一編。

ある種の「らしさ」を感じるのは「詮索好きな老婦人の事件」
ホームズ&ワトソンではなく、老婦人ことホスキンズ夫人の活躍が一番の見せ場。

それにしても、聖典にほんの少ししか出てこない記述から、
いかに物語を膨らませるか、作り込んでいくかを考えると、
北原さん始め、多くのホームズパスティーシュを書かれた作家さんの苦労は
並大抵ではないでしょう。ホームズらしさを失わず、それでいてオリジナリティを
求められるのは、相当の技量が無いとまず書けません。

語られざる事件はまだまだたくさんあります。
北原さんにはぜひそれらの事件も書いてほしいですね。


シャーロック・ホームズの蒐集 (創元推理文庫)

シャーロック・ホームズの蒐集 (創元推理文庫)

  • 作者: 北原 尚彦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/03/22
  • メディア: 文庫



シャーロック・ホームズの蒐集 (創元推理文庫)

シャーロック・ホームズの蒐集 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/03/23
  • メディア: Kindle版



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霧の夜にご用心 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

“霧の夜の殺人“こそがサラリーマン平田正也の求める「理想的な殺人」。
会議中、社員の小浜一美に悪態をついた顧問桜田に、平田は怒りを覚えた。殺してやる!
酔っ払った桜田を待ち伏せしていたが、何者かに桜田は殺されてしまう。
そして翌日、一美が行方不明に!さらに犯人らしき人物から謎の電話が平田へかかるようになり……。
切り裂きジャックになり損ねた男の近くで起こる連続殺人事件。

また久しぶりの更新になってしまいました。やれやれ・・・

最後まで読むと、ひたすら小浜一美が可哀想だったなあと思います。
登場人物の中では救われなさ過ぎる。

しかし相変わらず設定が面白い。
主人公の平田正也はなぜか「切り裂きジャック」に憧れていて、
殺人を「ジャック」と同じ状況下で犯そうと熱望しているところから物語は始まります。

途中から登場する大場妙子の行動力はまさに赤川作品の女性主人公そのもの。
平田も彼女に押されっぱなしですが、物語が進むにつれ、「切り裂きジャック」から
勇敢な男へと成長していくのがまた良いです。
そして途中は妙な三角関係、いやハーレム状態になるところがうらやましい。

犯人はだいたい想像が付くのではないかと思います。
というより、犯人がある事実を電話で伝えたことが、平田自身も気付いたように
決定的証拠ですしね。

しかしまだまだたくさん未読作品が多そうです。
徳間文庫の赤川作品復刊には今後も期待したいですね。


霧の夜にご用心 (徳間文庫)

霧の夜にご用心 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/05/02
  • メディア: 文庫



霧の夜にご用心 (角川文庫)

霧の夜にご用心 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2000/12/08
  • メディア: Kindle版



霧の夜にご用心 (中公文庫)

霧の夜にご用心 (中公文庫)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1995/04/01
  • メディア: Kindle版



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