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しあわせの書-迷探偵ヨギガンジーの心霊術 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

二代目教祖の継承問題で揺れる巨大な宗教団体“惟霊講会”。
超能力を見込まれて信者の失踪事件を追うヨギガンジーは、
布教のための小冊子「しあわせの書」に出会った。
41字詰15行組みの何の変哲もない文庫サイズのその本には、
実はある者の怪しげな企みが隠されていたのだ―。
マジシャンでもある著者が、この文庫本で試みた驚くべき企てを、
どうか未読の方には明かさないでください。

このところ泡坂作品の復刊、そして文庫化は素晴らしいものがありますね。
『泡坂妻夫引退公演』に続き、『曾我佳城全集』も創元推理文庫で
再文庫化されるとの情報もあり、うれしい限り。

そこで前回に続き、ヨギガンジーシリーズを一気読み。
本作は『ヨギガンジーの妖術』で弟子となった不動丸、そして途中から突然合流した
美保子の3名で旅を続けていて、『妖術』を読んでいた方がより楽しめるかも。

『しあわせの書』なる本は何が、しあわせ、なのか。
なぜ死亡したとされる人々が「惟霊講会」に居るのか。

様々な謎が断食中のガンジーの推理から一気に語られる
中盤から終盤にかけての盛り上がりは圧巻。
迷探偵とありますが、いやいや御謙遜を、名探偵ですよ。

ただし、確かにマヌケな面もあるのは否定しません(笑
しかし、しあわせの書の意味が個人的にはツボでしたね、なるほどと(笑



ところで本書にはもうひとつ、筆者ならではのある驚異の「仕掛け」が施されて
いるのですが、それを書くのはナンセンスでしょう。
この「仕掛け」はぜひ皆さんお読み頂いて、筆者の凄さを味わってください。




しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/07/31
  • メディア: 文庫



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三毛猫ホームズの証言台 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

因縁めいたつながりのある人々が集った“高原ホテル”。法廷で決定的な証言をし
無罪をもたらした女性と結婚した千葉。大企業の社長令嬢の婿となった記憶喪失の男、辻川。
彼の出現により未来を失った安西…。奇しくもホテルに同行した片山刑事たちは、
複雑な人間閑係が巻き起こす事件に対峙する。そして、ホームズの可愛らしい後輩も登場!
国民的大人気シリーズ第51弾!

はや51作目ですか。いや本当に長寿シリーズです。
本作は「高原ホテル」が舞台となりますが、ホテルで思い出すのは
やはり「黄昏ホテル」
本書も「黄昏ホテル」同様、まさに解説文にあるように因縁めいたつながりの
ある人々が集います。

それにしても、これだけの登場人物を本当にうまく描ききるなあと感心します。
プロローグのおそらくは虚偽の証言をした森川礼子と、それを依頼した千葉克茂。
この二人の物語が次項から始まるかと思いきや、お見合い叔母さんの異名を取る
児島光枝が登場し(笑)さらには辻川寿男とその妻・友世・・・と
目まぐるしい場面展開にもかかわらず、読みづらさを感じない。さすがです。

本作ではホームズの弟子(?)パリという子猫が登場します。
どういう風貌なのかはっきり書かれていないのですが、ホームズがなにやら指導をしている
場面もあるし、かなり優秀な弟子のようです。

最後の大団円は、ご都合主義といってしまえばそれまでですが、
しかしこれがホームズや片山たちが持つ事件解決の力なのでしょう。

今回の解説で山前譲さんは、カッパノベルズ刊行時の<著者のことば>を
引用して、このシリーズのおおまかな流れを説明されています。

ところが文庫購入だとこの<著者のことば>を読めず、今回紹介されて、
改めて本シリーズの位置づけの変遷を垣間見ることができた気がします。


「推理」や「狂死曲」「怪談」「降霊騒動」といった作品群から、
「花嫁人形」「危険な火遊び」「怪談を上る」そして本作「証言台」。
山前さんも指摘されるように、本シリーズは現実社会の変遷を相当受け入れつつも、
そこにホームズ・片山姉妹・石津刑事・栗原捜査一課長といった「変わらない」
シリーズキャラクターを入れる事で、現代社会や時の世相へ常にメッセージを
送り続けているのでしょう。
赤川さんはそれを一貫して行ってきたのかもしれませんが、
やはり初期・中期と比較しても、この色合いは近年の作品群に多く見受けられる
気がします。

とはいえ、前にも書きましたが、初期・中期の作品群のテイストも読みたいのは確か(笑
先生、ぜひお願いします。


三毛猫ホームズの証言台 (光文社文庫)

三毛猫ホームズの証言台 (光文社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/04/11
  • メディア: 文庫



三毛猫ホームズの証言台 (光文社カッパ・ノベルス)

三毛猫ホームズの証言台 (光文社カッパ・ノベルス)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/12/20
  • メディア: Kindle版



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心霊殺人事件-安吾推理短編 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

本格推理にして本格文学。安吾ミステリが『不連続殺人事件』だけではもったいない!
同じくあの巨勢博士が活躍する「選挙殺人事件」「正午の殺人」、
元奇術師・伊勢崎九太夫がいい味を出す「心霊殺人事件」「能面の秘密」。
そして、あずかり知らぬわが涙かな―傑作「アンゴウ」…。
知的パズルの面白さも存分に発揮した全10篇。

この連休は積ん読本をどんどん読んでいこうと思っていたのですが、
ほとんど寝ているばかりで、中々進みません。

本書は連休前から読み進めていた一冊。
巨瀬博士以外にも探偵役が居たのですね。驚きました。
しかし、この伊勢崎九太夫、性格的には巨瀬博士に近いなあと感じました。
博士よりイヤミでは無いですが(笑

「アンゴウ」は傑作。暗号小説として、あるいはミステリとしてという意味でなく、
最後の余韻含め、ラストを飾るにふさわしい作品です。
安吾とかけているんでしょうね、だからわざとカタカナ表記なんでしょうか。

他では「選挙殺人事件」と「影のない犯人」の2編。
前者は、殺人事件そのものよりも、なぜ選挙に出たのかというホワイダニットの要素
がとても面白い。明かされる動機も意表を突いています。

後者は時代や世相を反映させた作品といえますが、これは推理小説なのかどうかという
問題はありそうな気がします(笑
兄妹の会話の後に書かれるラストの描写はある種傑作です。このタイトルの
意味を語ってくれています。


心霊殺人事件: 安吾全推理短篇 (KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ)

心霊殺人事件: 安吾全推理短篇 (KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ)

  • 作者: 坂口安吾
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/03/05
  • メディア: 文庫



心霊殺人事件 安吾全推理短篇 KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ (河出文庫)

心霊殺人事件 安吾全推理短篇 KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/03/06
  • メディア: Kindle版



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怖ろしい夜 [西村京太郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

秋山は商事会社の平凡なサラリーマンだ。給料日、28歳になる恋人の明子に結婚を申し込んだところ、
あと半年待って欲しいと言われた。半年したら叔母の莫大な遺産が入るというのだ。
だが、彼女はその晩何者かに殺されてしまう。しかも彼女には叔母などいなかった。
秋山は殺人犯の容疑をきせられ逃亡するが……。
事件の裏には意外な事実が!!(「夜の追跡者」) 妖しい夜、寂しい夜、暗い夜。
様々な夜をテーマにしたオリジナル短編集。

久しぶりの西村御大の作品です。以下、少しネタバレ。




オススメは「怠惰な夜」と「夜の脅迫者」
この2編、似ているんですよね。いずれも自業自得というか、藪をつついて蛇を出す
かのような話です。
特に前者は、遺産を狙うという明瞭な目的があるとしか思えない状況を、
実にうまく利用した木村京子の作戦勝ちでしょう。


刑事モノとしては中々秀逸なのは「夜の牙」
十津川警部&亀井刑事のコンビが有名ですが、この三井刑事&安田刑事の
他の作品も読みたくなりました。

「夜の追跡者」は付き合っていた彼女の嘘から始まる男の悲劇ですが、
本作はラストがある意味どんでん返し的な話なんですが、
絶対この刑事は処分されるだろうと思います(笑
付けている間にさらに人が殺されているじゃないかと。


怖ろしい夜 (角川文庫)

怖ろしい夜 (角川文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/01/24
  • メディア: 文庫



怖ろしい夜 (角川文庫)

怖ろしい夜 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2019/01/24
  • メディア: Kindle版



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世界推理短編傑作集4 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

珠玉の推理短編を年代順に集成し、一九六〇年初版で以来版を重ね現在に至る『世界短編傑作集』
を全面リニューアル!第四巻にはコッブ「信・望・愛」、ノックス「密室の行者」、
バーク「オッターモール氏の手」、ハメット「スペードという男」、ダンセイニ「二壜のソース」、
ウォルポール「銀の仮面」、セイヤーズ「疑惑」、クイーン「いかれたお茶会の冒険」、
ベイリー「黄色いなめくじ」の一九三〇年代以降の名作九編を収録!


以下ややネタバレ。




本書所収で最も有名なのは「二壜のソース」ではないでしょうか。
ラストの1行が持つ恐ろしい意味が読者に衝撃を与えます。

個人的に最も恐ろしいと感じたのは「銀の仮面」。
これ、推理短編なんでしょうか。
ホラー小説に感じました。そして極めて後味も悪い作品です。
藤子不二雄Aの『魔太郎がくる』にも似たような話がありますが、
これはその先駆けなんでしょうね。
相手の善意を逆手に取っているのが、さらにたちが悪いですけど。
(というか、初めからそこを狙っていたとも読めますけど)

これに最初之「オッターモール氏の手」も推理小説というよりも、
サイコサスペンスに近い印象を持ちました。

クイーンの「いかれたお茶会の冒険」は傑作ですね。
単純な謎を、名探偵自身が「奇妙な味」に実は仕立てているという、
かなり面白い趣向です。
徹頭徹尾、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』を意識して書かれてているのも
良いのです。特に「鏡」からクイーンがヒントを得るところが個人的には秀逸。

「密室の行者」は、密室内に、食べ物や飲み物があったにもかかわらず、
餓死するという、極めて不可思議な謎が魅力的です。
トリックはよく上手くいったなあと思いますが、これに気付いた探偵を褒めるべきでしょう。



世界推理短編傑作集4【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集4【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/02/12
  • メディア: 文庫



世界短編傑作集 4 (創元推理文庫 100-4)

世界短編傑作集 4 (創元推理文庫 100-4)

  • 作者: E.ヘミングウェイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1961/04/07
  • メディア: 文庫



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大聖堂の殺人 ~The Books~ [周木律]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

解は示された。大人気シリーズ、ついに終幕!
天才数学者が館に隠した時と距離を超える最後の謎。

すべての事件を操る数学者・藤衛に招かれ、北海道の孤島に聳え立つ大聖堂を訪れた宮司百合子。
そこは、宮司家の両親が命を落とした場所だった。災禍再び、リーマン予想の解を巡り、
焼死や凍死など不可解な殺人が発生する。しかし、藤は遠く離れた襟裳岬で講演の最中だった。
大人気「堂」シリーズ、ここに証明終了!
以下、少しネタバレ。





「堂」シリーズ最終作。
ついに「藤天皇」こと藤衛と宮司百合子・善知鳥神が対峙します。
ところでこのシリーズのトリックは回転・動くが確実なので、
今回は一体何が回転するのか気になっていました。

今回は「動く」のですが、これはまたアクロバティックすぎます。
また、かつて起きた殺人をなぞるように起きる連続殺人のトリックもお見事。


しかし、最終作にしてはちょっとなあという読後感。
まず、自分は妖精という数学者は本当に必要だったのか、よくわかりません。
各章のタイトルも「闇」や「蝕」などは要らなかったのでは・・・

最大の不満は十和田只人の扱いです。
本シリーズの探偵役を途中まで務めたにも拘わらず、その立場の逆転には
非常に驚きました。
本書で彼が藤天皇に従属している旨が書かれますが、これまでのシリーズで
そういう描写ありましたっけ?(私が失念しているだけでしたらすいません。)

個人的には本書で再び探偵役に返り咲いて欲しかったのですが、
本シリーズが十和田只人の物語と見せかけて、実は宮司百合子の物語で
あることを踏まえれば、中々難しいとは思いましたが・・・

で、彼は本当に本書では何もしない。いや、最後に腕力を発揮したくらいで、
百合子の説得は全く効果なし。こんな姿は観たくなかったなあ・・・

またかつて大聖堂で起こった殺人事件の真相がちょっとなあ・・・
他国に居た人物がいかに殺人を行えたのかというのは、
確かにこの真相くらいでないと中々難しいのでしょう。

ただし、本シリーズは館シリーズを意識しているのは間違いないでしょうが、
最初、堂を作った沼四郎、そして放浪の数学者・十和田只人という探偵役。
この基本を完全に180度変えつつも、シリーズとして続けたのは、素晴らしいと思います。

周木律先生、お疲れ様でした。
これからも我々を楽しませてください。



大聖堂の殺人 ~The Books~ (講談社文庫)

大聖堂の殺人 ~The Books~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 文庫



大聖堂の殺人 ~The Books~ (講談社文庫)

大聖堂の殺人 ~The Books~ (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: Kindle版



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ヨギ・ガンジーの妖術 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

名(酩?迷?)探偵ヨギ ガンジー登場!ドイツ人とミクロネシア人と大阪人の血をひき、
ロンドンではヨーガを教え、シカゴではすりの実演、東京では医者を相手に催眠術の講義をする、
謎の男ヨギ ガンジー。心霊術、念力術、予言術、枯木術、読心術、分身術、そして遠隔殺人術…。
頭にターバンを巻き、長い白衣を着た正体不明の名探偵が、超常現象としか思えない
不思議な事件の謎に挑む!

泡坂御大作品の復刊と、『引退公演』の文庫刊行が近く
とてつもなく有名だけど、未読のヨギ・ガンジーシリーズを購入しました。
なお、長編2編も購入済みです。
以下、少しネタバレ。



オススメは「王たちの恵み<心霊術>」と「釈尊と悪魔<読心術>」の2編。

前者は募金箱から「誰が」寄付金を盗んだのか?という謎が、
ガンジーにより180度逆転するという傑作。
最初の登場作品なのに、泥棒に間違われているガンジーも面白いです。

後者はガンジーの謎解きもさることながら、霧丸の役者ぶりが良い。
しかし、ガンジーと不動丸のコンビは確かに劇団に向いてそうですね。

それにしてもガンジーは各方面で先生と呼ばれながら、実際に神秘的な力を
持っていないというのを、その人たちも知っているというのが中々に面白い。
ところで名探偵→迷探偵→酩探偵とその表記の変化は当然見逃せません。
私としては、もっと短編で「名探偵」のガンジーの活躍が読みたかったですね。



ヨギ ガンジーの妖術 (新潮文庫)

ヨギ ガンジーの妖術 (新潮文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/01/27
  • メディア: 文庫



ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/07/01
  • メディア: Kindle版



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屋上 [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

自殺する理由がない男女が、次々と飛び降りる屋上がある。足元には植木鉢の森、
周囲には目撃者の窓、頭上には朽ち果てた電飾看板。そしてどんなトリックもない。
死んだ盆栽作家と悲劇の大女優の祟りか?霊界への入口に名探偵・御手洗潔は向かう。
人智を超えた謎には「読者への挑戦状」が仕掛けられている!

U銀行の屋上にある数多くの盆栽(盆景)
この盆栽は多くのいわくがあり、この盆景へ水をやりにいった行員・岩木俊子が
突然自殺し、その後も次々と、「自殺しない」と言っていた行員の自殺が続く。
これを取材していた小鳥遊記者は、御手洗潔へ相談し・・・

最初のオカルト的な話は話の枕であり、なぜ住田係長の部下、そして最後には住田係長
までもが自殺してしまうのか、というのは本当に謎です。
これをどう論理的に御手洗が解決するのか、気になり気になり一気読みしました。

途中途中フォントが違う物語が挿入されます。
これが「苦行者」田辺信一郎と「サンタクロース」菩提裕太郎の二人の物語です。
解説で乾くるみ先生が、両者ともトイレで人生のどん詰まりを味わうという共通点が(笑

そして先生が本書を「ユーモアミステリ」と評しているのですが、これは納得。
まず舞台が神奈川県T見市なのに、大阪が舞台かのような錯覚を起こさせる登場人物。
そして上記のトイレでの人生どん詰まり。
最後に明らかにされる真相も、ユーモアミステリと言って良いのではないでしょうか。


本事件は1991年頃に起きた事件らしく、まだ石岡との共同生活中の、
エキセントリックが目立つ頃の御手洗の事件でかなり楽しみにしていました。
真相はかなり驚きましたが、屋上の図面はほしかったなあ・・・
それと、小鳥遊兄弟のあまり意味がない会話が続くのが苦痛でした。

しかし、この頃の御手洗の事件簿はもっと読みたいですね。


ところで、乾先生の解説は必読です。
特に『占星術殺人事件』の刊行2週間後に、横溝正史御大が死去し、
御大が島田荘司へ本格・新本格の旗手のバトンを渡した、という話はある種感動しました。
島田荘司御大という旗手は、講談社の宇山日出臣氏、東京創元社の戸川安宣という
お二人を得て、平成が終わろうとする中、多くの担い手を生み出しました。

これからも御大には幅広い活躍とともに、若き御手洗シリーズもぜひ執筆をお願いします。



屋上 (講談社文庫)

屋上 (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 文庫



屋上 (講談社文庫)

屋上 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: Kindle版



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死者の輪舞 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大観衆に湧く競馬レースの最中、男が刺殺された。偶然居合わせた警視庁特犯課の
新米刑事・小湊進介はベテラン刑事・海方惣稔とともに捜査を開始。
鮮やかな手口からすぐに容疑者の名前が挙がるが、この殺人を皮切りに容疑者が
次から次へと殺されていく殺人リレーがはじまり…果たして真犯人が仕組んだ謎を、
二人は解けるのか?

久しぶりの更新です。
昨年、河出書房が泡坂妻夫作品を3作(「花嫁のさけび」「妖盗S79号」「迷蝶の島」)
が復刊されましたが、なんとそれに続く泡坂作品復刊です。

本書は全く知りませんでした。そして長編。しかも刑事が探偵訳を務める作品とは。

海方の名台詞(?)の「これにてお終い、目出度く千秋楽、ちょんちょんだ」は
本書で何度も何度も登場します(笑

海方はこの殺人が連続殺人、リレー殺人であることに少し気付きながら、
早く解決させたい(捜査が面倒くさいから・笑)ため、上記台詞を多用しているんでしょうねえ。

ただし、立田一圓の「宝くじに当たる以上の確率の」死去は、海方にとっては
自らの考えに疑念を持ったのかもしれませんが。いや、面倒だっただけか(笑

被害者の繋がりに勝畑病院が関係しているのは想像できるのですが、
立田の殺人と、最後のあるどんでん返しがお見事。
ただし、海方と小湊は情けないなあ・・・

次作の『毒薬の輪舞』も4月に発売予定!楽しみです。


死者の輪舞 (河出文庫)

死者の輪舞 (河出文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/02/06
  • メディア: 文庫



死者の輪舞 (講談社文庫)

死者の輪舞 (講談社文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1989/01/01
  • メディア: 文庫



死者の輪舞 (講談社文庫)

死者の輪舞 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1989/01/01
  • メディア: Kindle版



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ゴールド・マイク [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

川畑あすかは友達の佳美とともにオーディションに挑戦していた。三度目にもかかわらず、
“あがり性”のあすかは、途中で歌えなくなってしまう。ところが、本選終了後に
審査員のNK音楽事務所中津が声をかけたのはあすかだった!佳美にそのことを話せぬまま、
アイドルへの道を進みだしてしまったあすかは一気にスターへの階段を駆け上がるが、
周囲には大人たちの黒い思惑が渦巻いていた!

この作品はダブル主人公という、赤川作品では珍しい作品だと思います。
しかも、芸能界を舞台としており、「川畑あすか」は偶像世界の、「前田佳美」は現実世界の、
というある種の棲み分けが出来ているんではないかと深読み。

あすかをめぐる各芸能事務所の思惑や、その関係者、そして家族・・・
ドロドロした汚いものが見える中で、
あすかと佳美は、自らを見失うことなく、力強く前に進んでいきます。
これがとても素晴らしい。

そして全てを見通しているかのような存在である佳美の彼氏・高林悟。
実のところ真の主人公ではないかと思いました。

ひとつ腑に落ちないのは、川畑亮の事件。
結局亮が殺人犯だったようですが、あの場面や説明はちょっとよくわかりませんでした。


それにしても赤川作品が続きました。やっぱり面白いんですよね。


ゴールド・マイク (徳間文庫)

ゴールド・マイク (徳間文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: 文庫



ゴールド・マイク (幻冬舎文庫)

ゴールド・マイク (幻冬舎文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2001/10/01
  • メディア: 文庫



ゴールド・マイク (幻冬舎文庫)

ゴールド・マイク (幻冬舎文庫)

  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2001/09/30
  • メディア: Kindle版



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スパイ失業 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

入院中の夫と中1の娘を抱える主婦のユリ。その正体は東ヨーロッパにある小国のスパイだった!
しかし財政破綻で祖国は突然消滅、ユリが表の仕事である通訳に専念しようと決めた矢先、
駅のホームから突き落とされかけたり、派遣先のパーティ会場で大臣を狙う暗殺者に遭遇したりと、
周囲が騒がしくなる。ついには夫と娘にも危険が迫り、ユリは謎の敵に立ち向かう―。
すべては家族を守るため。戦う母のユーモアミステリー!

以下、ややネタバレ。





赤川先生の作品では殺し屋(元殺し屋)や泥棒などは主人公で多く登場しますが、
スパイはあまり居ないイメージです(知らないだけでしたらすいません。)
本書のタイトルが、中を読むと実に皮肉が効いていて、
これまで勤めてきた「スパイ」的な仕事(実際は単なる情報収集のみ)より、
国が無くなり、その仕事を失業してからの方が、スパイの仕事をしているんですよね。
スパイというより007に近いくらい。
しかも他人がユリをそのように見ている(特殊諜報部員)というのもまた皮肉です。

自分の夫が重大な秘密を握っているものの、直接に夫婦でその話は語られない所や、
最後に登場する黒幕がある超意外な人物だったりと、意表を突くドンデン返しもあり、
一気読み、間違いなしです。

そして確実に怪しいユリの相方(?)を勤めることになる河本くんが
怪しいだけで、何の関係もないけども、ものすごく度胸が据わっている人物だったり。
一国の隠し財産を巡る、凄惨な争いが描かれるのですが、その凄惨さを覆い隠す
ユーモアを実ニうまく織り交ぜています。さすが赤川先生。

最後のある超意外な人物の所は、物語を離れ、日本がスパイ天国を言われている皮肉にも
読めましたが、さすがにこれは深読みでしょうね。


スパイ失業 (角川文庫)

スパイ失業 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/01/24
  • メディア: 文庫



スパイ失業 (角川文庫)

スパイ失業 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2019/01/24
  • メディア: Kindle版



スパイ失業 (ハルキ文庫)

スパイ失業 (ハルキ文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2000/12/01
  • メディア: 文庫



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明日に手紙を [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

製品に欠陥のある洗濯機が原因で、女性が感電死する。製造元のK電機工業は欠陥を知りながら
それを認めず、世間から非難を浴びる。そんな悪い状況から抜け出したいK電機工業の成瀬は、
被害者家族の平田夫婦や不買運動をしている人々の絆を壊すため、
捏造した手紙を出す計画を提案する。その計画は思惑通りに進んでいくかに思われたが…。

良くも悪くも、一族経営に近いK電機工業、社長は後半部分でまともな対応に出るのですが、
息子が酷すぎる。社長の対応だけではおそらくもう会社の建て直しは無理でしょうね・・・

K電機ばかりを攻めるマスコミや、被害者家族、不買運動を続ける人々を
混乱させる目的で書かれた手紙。
それがK電機への不買ではなく、平田家の現実のものとなるというのは
手紙を出した成瀬夫人やこれを画策した武藤副社長も予想だにしなかったでしょう。

一方、現代社会で手紙、というのはせいぜい年賀状で残っているくらいでしょうか。
それすらも、LINEやe-mailで事足りる世の中になりました。
しかし、手紙の持つ<不気味さ>はLINEやe-mailでは表現できないでしょう。
今の時代でも、突然自分の所へ、奇妙な手紙が届いたら・・・
本作はそんな手紙の持つ異様さ、不気味さも表していると感じました。


明日に手紙を (実業之日本社文庫)

明日に手紙を (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2018/12/06
  • メディア: 文庫



明日に手紙を (中公文庫)

明日に手紙を (中公文庫)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/04/01
  • メディア: Kindle版



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世界推理短編傑作集3 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

珠玉の推理短編を年代順に集成し、1960年初版で以来版を重ね現在に至る
『世界短編傑作集』を全面リニューアル!!第3巻にはフィルポッツ「三死人」、
クリスティ「夜鶯荘」、ワイルド「堕天使の冒険」、ユーステス「茶の葉」、
ウイン「キプロスの蜂」、ロバーツ「イギリス製濾過器」、ヘミングウェイ「殺人者」、
コール夫妻「窓のふくろう」、レドマン「完全犯罪」、バークリー「偶然の審判」
の1920年代の作品10編を収録した。

以下、ネタバレあり。





馬鹿馬鹿しい一言かもしれませんが、本当にどれも傑作です。
「三死人」は、動機、いわばハウダニットに焦点をあてた傑作。
名探偵デュヴィーンはあくまで三人の性格のみを知った上での推理、と付け加えますが、
これがまた実に見事な推理。

クリスティの「夜鶯荘」も初読。
知り合ってすぐに結婚した男女。
夫のちょっとした言動や、ひょんなことから知る夫の嘘、そして鍵のかかった引き出しに
入っていた新聞記事から、夫が自分を殺そうとしているのでは?と疑心暗鬼に陥り、
それから反抗していくまでが一気に語られます。
ラストまで読むと、怖いのは夫なのか妻なのか中々わからなくなる作品。
夫も意外と小心者なのではないかとちょっと思ってしまった(笑

「茶の葉」はもう言わずもがな、ミステリ好きなら即気付くトリックでしょう。
しかし、茶の葉がどう関係するのかと、法廷で真実を暴くという場面が良い。

「窓のふくろう」は密室を扱った殺人事件なのですが、
実の所犯人はもうあからさまなのです。
ただし、この表題が一番ミステリアスというか、中々凝っているなあと感じます。

「完全犯罪」は「推理小説で終わる推理小説」と評された作品。
名探偵=名犯人という構図をそのままミステリとした稀な作品。
あ、しかし名探偵ではないからこそ、この犯罪が生まれたというのは
また皮肉です。

すでに4巻も刊行されました。こちらも楽しみです。



世界推理短編傑作集3【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集3【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: 文庫



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殺意のまつり [山村美紗]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

二十年前に発生した殺人事件の真犯人と名乗る男が現れた。だが、
当時捕まった男は十五年の刑期を終えて出所している。調査を進める弁護士の元には、
冤罪の証拠が続々積み上がる(「殺意のまつり」)。どんでん返しの連続に巧緻なトリック。
「女王」の片鱗をすでに発揮した初期傑作が一堂に!

本ブログでは山村美紗先生の著書は初めて。
近年の各作家さんの復刊ブームで、本書も復刊し、気になっていたので購入しました。

本格色が強いのは「恐怖の賀状」と「黒枠の写真」でしょうか。
後者は関東圏に住んでいる人は陥りやすいミスだろうなあ。
ただ、本作の大沢五郎の決断力の早さは凄すぎます。殺人を思い立ってから即実行という。

「孤独な証言」は現在でも当てはまる、奥が深い作品。
唯一生き残った乗客の証言、それをどう「解釈」するかは聞き手次第。

表題作は秀作。
過去の殺人事件が実はえん罪ではないか?という所から物語が始まり、
それが晴らされるのかが焦点と思いきや、最後の怒濤の展開が素晴らしい。
まさに「殺意のまつり」というタイトルに偽りなし。

千街さんの解説にある『幻の指定席』や『死体はクーラーが好き』もぜひ復刊を
お願いします。



殺意のまつり-山村美紗傑作短篇集 (中公文庫)

殺意のまつり-山村美紗傑作短篇集 (中公文庫)

  • 作者: 山村 美紗
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/07/20
  • メディア: 文庫



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鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ [周木律]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

異形の建築家が手掛けた初めての館、鏡面堂。すべての館の原型たる建物を訪れた百合子に、
ある手記が手渡される。そこには、かつてここで起きたふたつの惨劇が記されていた。
無明の闇に閉ざされた密室と消えた凶器。館に張り巡らされた罠とWHO、WHY、HOWの謎。
原点の殺人は最後の事件へ繋がっていく!

前々作で探偵役が自らその役を降り、そして前作でワトソン役(たち)が降板するという、
シリーズとしては異例の歩みを続ける<堂>シリーズ。
本作では、一連の事件の発端になった(と思われる)「鏡面堂」の事件が語られます。




やはり<堂>は回転するのです。これがこのシリーズの貫徹したものでしょうね。
また「手記」という体裁を取って語られることから、そこに何かの仕掛けがあるのは
なんとなく予想がつきます。

トリックそのものはさすがだし、容疑者外しの過程も面白い。
容疑者のそれぞれの特徴がうまく落とし込まれていて、上記書いた仕掛けは
決して読者にとってアンフェアである訳ではありません。

しかし、そもそもの事件を起こした動機がどうもなあ・・・という印象。
まあこれはシリーズ通してもそのようなものは見受けられましたけど。
「手記」を書いた人物にしても、想像がだいたいつくし、
やはり宮司司と百合子、そして十和田只人、善知鳥神が巻き込まれた事件の謎が
最後まで鍵となるようです。

次作であり最終作「大聖堂の殺人~The Book~」に期待しましょう。



鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)

鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/12/14
  • メディア: 文庫



鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)

鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/12/14
  • メディア: Kindle版



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カササギ殺人事件 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

名探偵アティカス・ピュント・シリーズ最新刊『カササギ殺人事件』の原稿を読み進めた
編集者のわたしは激怒する。こんなに腹立たしいことってある??著者は何を考えているの?
著者に連絡がとれずに憤りを募らせるわたしを待っていたのは、予想だにしない事態だった――。
クラシカルな犯人当てミステリと英国の出版業界ミステリが交錯し、とてつもない仕掛けが炸裂する!
夢中になって読むこと間違いなし、これぞミステリの面白さの原点!

1955年7月、パイ屋敷の家政婦の葬儀がしめやかにおこなわれた。
鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、
あるいは……。その死は小さな村の人々へ徐々に波紋を広げていく。
消えた毒薬、謎の訪問者、そして第二の死。病を抱えた名探偵アティカス・ピュントの推理は――。
現代ミステリのトップ・ランナーによる、巨匠アガサ・クリスティへの愛に満ちた
完璧なるオマージュ作品!

作中作である「カササギ殺人事件」は実に見事な作品です。
名探偵アティカス・ピュントはホームズでも、ポワロでもない、別のタイプの名探偵ですが、
サクスビー・オン・エイヴォンという片田舎、准男爵が住むパイ屋敷、
開発計画が進む村の森・ディングル・デル、噂好きの家政婦の死etc・・・
これでもかと、確かにクリスティへのオマージュに満ちあふれています。
そしてこれがまたおもしろい。
ピュントは村の人々それぞれに話を聞き、そしてその話を聞く一方で
住民たちの顔もまた見えてくるのです。
牧師夫婦の行動、老医師の遺した言葉、追放された准男爵の妹。
登場する人物なにやら謎めいていて、それでいて魅力的なのです。

ポワロでもない、と書きましたが、実のところ捜査方法や着眼点などは結構似ている
気がしました。
下巻のかなり後になり、ようやくピュントから真相が語られるのですが、
家政婦の残した日記の真の意味や、暖炉の燃え滓と手紙、この2つが事件の真相を明らかにする
決定的なものであることをピュントが見抜く所は思わず唸りました。

この作中作「カササギ殺人事件」は、確かにこれは昨年度No.1というのは頷けます。
元々作者であるアンソニー・ホロヴィッツ作品は、シャーロック・ホームズの正当な続編で
ある『絹の家』を読んだ経験がありますが、あれはホームズものにする必然性は
感じませんでしたね。ミステリとしての出来云々よりホームズ譚かどうか、が
かなりウエイトを占めていたので、あまり好きではありませんでした。

しかし、本書は作中作で言えば、非常に楽しめました。
一方で、本作で描かれるまさに現代の事件、つまりカササギ殺人事件を書いたアラン・コンウェイ
の死に隠された真相は、うーんという感じ。
アランがピュントシリーズに隠したメッセージそのものは、中々面白いとは思います。
余談ですが、日本語だとネットでしか見ない言葉なのですけど、原文は何なんでしょう?

しかし、アランを殺した犯人の動機がそこにあったとしても、ちょっと納得できないかなあ。
しかも、真相が明るみにでても犯人を庇うような言動があったというのもどうかと。

このメッセージが出たところで、そこまで売上に影響が出るのだろうかと?でしたが、
結果的に物語内でも、ほとんど影響しなかったと語られているので、何のための
殺人だったのかと。
しかし、ある意味、物語上の殺人事件と、現実で起こる殺人事件の落差を描いている、
とも読めるので、そう考えるとそこまで悪くないかもしれないですね。

本書には数多くのオマージュ、パスティーシュがふんだんに盛り込まれているようなので、
それらを知っている方は、さらに楽しめるのではないかと思います。
いずれにせよ、アラン著の「カササギ殺人事件」はオススメです(笑


カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: 文庫



カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: 文庫



カササギ殺人事件 上 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件 上 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: Kindle版



カササギ殺人事件 下 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件 下 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: Kindle版



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幽霊から愛をこめて [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

高校一年の大宅令子は、編入先の全寮制山水学園へ向かっていた。同行する父は警視庁捜査一課の警部。道中、昨夜起きた殺人事件の話を知る。なんと学園の女子生徒が寮へ戻るところを殺されたという。
直前まで被害者と一緒にいた同級生は「白い幽霊をみた」と話していた。
事件に首を突っ込みたくなるタチの令子は、真相を探り始める。
一方、東京のNデパートでもよく似た殺人事件が発生する!

連続で赤川次郎御大。これも昨年読了済み。

いつもの女子高生主人公が事件を解決するユーモアミステリとはちょっと違います。
舞台は山間の全寮制山水学園だけでなく、東京でも似たような事件が起こり、
さらには主人公が3か月以上も行方不明になるという、大事件に。
ラスト、主人公へは伝えられない、ある非常に辛い真実が明かされるのですが、
令子は気付きそうですね。

単なる殺人事件に留まらず、なぜ殺人事件が起こり、令子にそっくりの人物までが目撃されるなど、
山水学園やその背後にある団体の真の目的はかなり驚きました。
赤川先生の作品で、幽霊とタイトルが付くと、だいたい本物の幽霊が登場したりするのですが、
それでもユーモアミステリなんですよね。
しかし、本作はそうではなく、なんというかカルトかつ普通に現在でも起こる可能性が
あるのではないかと感じました。


幽霊から愛をこめて (徳間文庫)

幽霊から愛をこめて (徳間文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/11/02
  • メディア: 文庫



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ローレライは口笛で [赤川次郎]

新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

新年一発目は昨年読了本から。
まずはAmazonさんの紹介ページから。

ナース仲間の久江、和子、千寿の三人は、休暇を取ってヨーロッパへ。ライン川の遊覧船で、
初老の紳士が具合を悪くした。彼を助けた千寿は、お礼にチェスの駒が付いたキーホルダーをもらう。
その紳士が行方不明になっている大学教授だと知った彼女は、帰国後、研究室に連絡をするが…。
口笛が奏でるローレライ。美しいメロディが、彼女たちを殺人事件へと誘う!

場面展開がめまぐるしい。そして本作はダブル・ヒロイン。
犯人はすぐにわかります。しかしそんなことは赤川次郎作品には関係ありません。

ローレライの音色、そして口笛、この辺りは恐怖を感じますね。
最後の場面はまさか自首のために警察へ行く二人とは到底思えず、
デート中の二人にしかみえない描写なのは、赤川次郎先生らしい作品。

ローレライそのものは、殺し屋の好きな曲だったのかなあ。
その辺りはたしか描かれていないんですよね。

一点いえば、この病院には入院したくない(笑


ローレライは口笛で 新装版 (光文社文庫)

ローレライは口笛で 新装版 (光文社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/11/08
  • メディア: 文庫



ローレライは口笛で 新装版 (光文社文庫)

ローレライは口笛で 新装版 (光文社文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/11/20
  • メディア: Kindle版



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ぼくのこのミス2018 [ミステリ]

今年もあと1日となりました。
年末恒例(?)の、今年読んだミステリのオススメをご紹介。

泡坂妻夫「花嫁のさけび」「奇跡の男」

復刊が続く泡坂妻夫先生の作品からは2作。

前者はここまでやるか、というまでの完璧なる叙述トリック。
「迷蝶の島」「妖怪S79号」と続いた河出書房新社からの復刊の中では一番のオススメ。

後者は完全に河出書房新社復刊を狙いにきた一作(笑
表題作は御大デビュー作かつ亜愛一郎初登場の「DL2号機事件」を思い起こさせます。



花嫁のさけび (河出文庫)

花嫁のさけび (河出文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/11/07
  • メディア: 文庫



花嫁のさけび (河出文庫)

花嫁のさけび (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/11/07
  • メディア: Kindle版



奇跡の男 (徳間文庫)

奇跡の男 (徳間文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/05/02
  • メディア: 文庫



奇跡の男 (光文社文庫)

奇跡の男 (光文社文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1991/02/20
  • メディア: Kindle版



復刊つながりで、「夜の終わる時/熱い死角」
郷原部長刑事シリーズで終了していた結城昌治先生作品でしたが、
ちくま文庫からの復刊で、新たな楽しみが増えました。


夜の終る時/熱い死角 (ちくま文庫)

夜の終る時/熱い死角 (ちくま文庫)

  • 作者: 結城 昌治
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/04/10
  • メディア: 文庫




今年はなんといってもヘレン・マクロイ作品は外せません。
「逃げる幻」と「牧神の影」
前者は圧巻。盲点を突いた作品でもあり、必読ではないかと思います。
後者はこの邦題が実に良い。暗号そのものは難解過ぎますが、物語にどんどん引き込まれます。


牧神の影 (ちくま文庫)

牧神の影 (ちくま文庫)

  • 作者: ヘレン マクロイ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/06/08
  • メディア: 文庫



逃げる幻 (創元推理文庫)

逃げる幻 (創元推理文庫)

  • 作者: ヘレン・マクロイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/08/21
  • メディア: 文庫



若竹七海「錆びた滑車」
改めて書くことはありません。
ちょっとした変化球をつけるなら、小林(元)警部補とまた共演してほしいなあ。


錆びた滑車 (文春文庫)

錆びた滑車 (文春文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/08/03
  • メディア: 文庫



錆びた滑車 葉村晶シリーズ (文春文庫)

錆びた滑車 葉村晶シリーズ (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/08/03
  • メディア: Kindle版



いやあ、実のところかなりの本は越年です。
また来年、たくさんのミステリに出会えることを期待します。

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切り裂きジャックを待ちながら [有栖川有栖]

毎年度、この時期にはクリスマスにまつわるミステリを紹介しています。
が、そろそろネタ切れ感が強い。
海外ミステリまで含め、そこまで多くない(はずはない)?
単に僕が知らないだけでしょうか・・・

そこで今年は有栖川有栖先生の国名シリーズ第5弾『ペルシャ猫の謎』収録の一編から。

かつて有栖川有栖の小説を舞台化したいと誘いを受けていた<屋根裏の散歩舎>の劇団員
からある相談を受ける。
それはの看板女優、鴻野摩利看板女優が誘拐され、12月24日までに身代金を振り込んで欲しい
というビデオメッセージが届けられたというものだった。
現実なのか狂言なのか、ゲネプロが行われる中、彼女の変わり果てた死体が発見される・・・

本作は動機という面では理解できないorできる、賛否両論ありそうです。
しかし、切り裂きジャックを題名に持ってきたことが、この動機と強く関連を持たせて
いるのではないかと勝手に思いました。
アリバイトリックは短時間で行ったにしてはかなり見事です。
あとは火村の登場と解決場面がかっこいい。

ところで本作含め、特に表題作「ペルシャ猫の謎」は火村シリーズの中でも異色作。
いや、この結末は中々書けません。
所収昨では「わらう月」と森下刑事が主役の「赤い帽子」が個人的オススメかつ快作。

それではすてきなクリスマス・イブ&クリスマスをお過ごしください。


ペルシャ猫の謎 (講談社文庫)

ペルシャ猫の謎 (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/06/14
  • メディア: 文庫



ペルシャ猫の謎 〈国名シリーズ〉 (講談社文庫)

ペルシャ猫の謎 〈国名シリーズ〉 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/06/14
  • メディア: Kindle版



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世界推理短編傑作集 2 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

欧米では、世界の短編推理小説の傑作集を編纂する試みが、しばしば行われている。
本書はそれらの傑作集の中から、編者の愛読する珠玉の名作を厳選して全5巻に収録し、
併せて19世紀半ばから1950年代に至るまでの短編推理小説の歴史的展望を読者に提供する。
本巻には、“奇妙な味”の短編「放心家組合」をはじめ、英米以外の作家であるグロラー、
ルブランの作品などを収録した。


以下ややネタバレ。



本作最大の個人的オススメはルブランの「赤い絹の肩かけ」
これまた恥ずかしながら、ルブランのルパンシリーズは小学生の頃に読んだ記憶があるくらいで、
実質初読と言ってよいです。
ルパンが怪盗だけでなく、名探偵としても活躍する本編は見事の一言。
推理の過程はあのシャーロック・ホームズを彷彿とさせますし、
そして、なぜ彼がこんな推理をガニマール警部へしたのかという最大の謎が
最後に明かされますが、これこそ怪盗ルパンの面目躍如ではないでしょうか。
短編集を読みたくなりました。

奇妙な味に区分されている「放心家組合」は良く出来た作品ではあると思います。
最初依頼されていた事件ではなく、全く別の犯罪を暴き出すという筋立てはかなりおもしろい。
そして、邦題の「放心家」というのがどこに登場するのか、
これが実に皮肉が効いていて絶妙。何を、放心しているのか。実にうまい。
そしてこんなところに目を付ける集団も頭が良い。

とはいえ、最後は事実上名探偵は敗北してしまうのが個人的には残念でしたね。
むろん名探偵短編集ではないので、必ずしも探偵が勝利するわけではないのですが、
2の一発目がこれというのがうまい構成なのか、個人的にひっかかりました。

科学者探偵の代表格たるゾーンダイク博士が、まさにその科学を駆使する
「オスカー・ブロズキー事件」は、これもあまり受け付けなかったですね。

比較するのも相当失礼なのですが、
サスペンスドラマとかで刑事の勘で捜査する部長刑事と、It(PC)を駆使するバディコンビという
ステレオタイプ的なドラマがかなーりありましたが、
ここまで科学を強調されると、ITをやたら強調しまくるこのドラマを思い出してしまいました。

ブラウン神父の「奇妙な足音」はもはや何も言うまでもなく、ブラウンものの中でも
1、2を争う傑作ではないでしょうか。

今月は3が刊行されます。その前にカササギ殺人事件かな?


世界推理短編傑作集2【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集2【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/12
  • メディア: 文庫



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このミステリがすごい!2019年版&2019本格ミステリ・ベスト10 [ミステリ]

いよいよこの時期がやってきました。
今年はこの2冊を購入。

『このミス』は原寮さんの『それまでの明日』が第1位。
去年の竹本健治さんの『涙香迷宮』に続き、ベテラン・大御所の受賞となりました。

葉村晶強し!『錆びた滑車』は第3位。
ハードボイルド&本格ミステリの路線、そして不幸な探偵をこれからもお願いします。

東野圭吾さんの『沈黙のパレード』はガリレオシリーズ最新作で、かなり高評価なので、
文庫化したら買う予定。

『本格ミステリ』の方では、大山誠一郎さんの『アリバイ崩し承ります』が第1位。
大山さんといえば、『アルファベット・パズラーズ』、『密室蒐集家』などを
私も愛読しております。こちらも文庫化したら購入予定。

そして有栖川有栖さんも安定の第6位。久々の国名シリーズですね。
綾辻行人さんや法月綸太郎さんなどのお名前が無いのが少々残念です。

ベスト10圏外ですが、小林泰三さんの『ドロシイ殺し』は
『アリス殺し』から始まる3作目。早く前2作を文庫化してくれ!

私の隠し玉では倉知淳さんがついに猫丸を一冊書きたいと述べておられて、
かなり楽しみです。

双方で海外ミステリで第1位を獲得した『カササギ殺人事件』は手元にあるものの、
未読。これは年内に読みたいですね。


それまでの明日

それまでの明日

  • 作者: 原 りょう
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/03/01
  • メディア: 単行本



アリバイ崩し承ります

アリバイ崩し承ります

  • 作者: 大山 誠一郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2018/09/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



錆びた滑車 (文春文庫)

錆びた滑車 (文春文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/08/03
  • メディア: 文庫



沈黙のパレード

沈黙のパレード

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/10/11
  • メディア: 単行本



ドロシイ殺し (創元クライム・クラブ)

ドロシイ殺し (創元クライム・クラブ)

  • 作者: 小林 泰三
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/04/28
  • メディア: 単行本



カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: 文庫



カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: 文庫



このミステリーがすごい! 2019年版

このミステリーがすごい! 2019年版

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2018/12/11
  • メディア: 単行本



2019本格ミステリ・ベスト10

2019本格ミステリ・ベスト10

  • 作者: 探偵小説研究会
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/12/06
  • メディア: 単行本



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悪の華 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

団地に住む一人の主婦が射殺された―。彼女の葬儀の日、7年ぶりに顔を合わせた“悪い仲間”たち。
現在は会社社長、ピアニスト、主婦とそれぞれの生活を送っている。その平和を脅かすように、
過去に仲間の1人を殺したあいつが帰って来たのだ!!一方、会社社長の背後に忍び寄る、
刑事と女性警察官の影。1人、また1人と仲間があいつの手で殺されてゆく…
最後に残るのは一体誰!?悪の悲しさと儚い友情を描いた傑作サスペンス。


まさに息をもつかせないジェットコースターのような、赤川作品らしい展開。
平凡な主婦(と思われた)谷沢佳子が拳銃で殺される冒頭のシーンは個人的には
物語に惹き込まれました。

神崎や迫田、綾子らが過去にどんな「悪」をしていたのかはっきりとは描かれません。
しかし、現在の生活はまともでも、物語の端々に出てくる、彼らの行動。
それは、たとえ、<ノラ>の出現がその引き金になったとしても、「悪」そのもの。

一方でそんな神崎に、警察官でありながらそれを裏切り、上司とまで撃ち合いをする
永峰静江という女性は、神崎のことが好きだからこその行動だったのでしょうか。

彼が生きているのは、多くの人の死の上にあることはまちがいありません。
神崎は最後まで生き残りますが、彼にとってそれは幸せだったのかどうか。



悪の華 (角川文庫)

悪の華 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



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女が死んでいる [貫井徳郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

二日酔いで目覚めた朝、寝室の床に見覚えのない女の死体があった。玄関には鍵がかかっている。
まさか、俺が!?手帳に書かれた住所と名前を頼りに、
女の正体と犯人の手掛かりを探すが―。(「女が死んでいる」)
恋人に振られた日、声をかけられた男と愛人契約を結んだ麻紗美。偽名で接する彼の正体を暴いたが、
逆に「義理の息子に殺される」と相談され―。(「憎悪」)
表題作他7篇を収録した、どんでん返しの鮮やかな短篇集。

技巧を尽くした珠玉の短編集と言っていいでしょう。
表題作はタイムリミットサスペンス。と思いながらも、主人公にその焦りがないのがすごい(笑
最後に女の意外な正体や、手帳に遺された手がかりの謎全てが明らかになりますが、
藤村の改心が少しは物語、いや死んでいた女の救いになったでしょうか。
しかし、このタイトルはすごい。そのままと言えばそのままですが、先を読みたくなる作品です。

「二重露出」はなんというか、犯人は殺人を犯してはいるものの、気の毒な作品。
しかしこの犯人「たち」、事前に相談しなかったのか?という所が少し疑問でした。

一方で、公園に住みついたホームレスの区別がほとんど付かないというのは
社会的な存在が無いかのような印象で、社会風刺のような印象を受けました。

「病んだ水」は手紙という形式をとった物語。
誘拐事件を仕組んだ人物の当たりはすぐつきますが、この作品、クリスティの超有名作品への
オマージュかと思いました。

「母性という名の狂気」は複数の視点から描かれる物語。そしてその視点にこそ、
ある大きなトリックが仕掛けられていたのです。収録作中、個人的には白眉。

ラストの「レッツゴー」はこれまでとは全く異なる作風の作品です。
そして、本作をラストに持ってきたのは、描かれるのが日常の謎に近く&ハッピーエンド
の物語だからでしょう。
もっとも鈴木家はかなり緩ーい感じもしますが(苦笑

解説によると、まだまだ多くの短編作品があるようで、
筆者のお考えもわかりますが、ぜひ一冊にまとめてほしい。
私としては貫井先生には短編集第3弾の吉祥院慶彦シリーズの第2弾をお待ちしております!


女が死んでいる (角川文庫)

女が死んでいる (角川文庫)

  • 作者: 貫井 徳郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/08/24
  • メディア: 文庫



女が死んでいる (角川文庫)

女が死んでいる (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/08/24
  • メディア: Kindle版



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教会堂の殺人 ~Game Theory~ [周木律]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

訪れた者を次々と死に誘う狂気の館、教会堂。
失踪した部下を追い、警察庁キャリアの司は館に足を踏み入れる。
そこで待ち受けていたのは、水死・焼死・窒息死などを引き起こす数多の死の罠!
司の足跡をたどり、妹の百合子もまた館に向かう。
死のゲームと、天才数学者が求める極限の問いに、唯一解はあるのか!?


以下、ややネタバレあり。



前作「伽藍堂」でシリーズとして大きな転換点を迎えた<堂>シリーズ。
本作でもその点では見事にやってくれました。
そして、百合子の出生がついに明らかになります。

さらに宮司司やこれまでの事件関係者にまでその累が及ぶことに。
筆者のあとがきはこのあたりの苦悩でしょうか?

今回も数式が盛りだくさんのなのですが、ゲーム理論が全面に登場するなど、
文系の自分でも館のトリックはなんとか理解できました。
おそらく一番恐ろしい「囚人のジレンマ」でしょう。

それにしても教会堂に突然関孝和の名前が登場したのが驚きました。
ついに江戸時代まで遡ったか、と。関の遺した算額、何が記されていたのでしょうか。

ところで<堂>シリーズはあと2作で完結するのですが、
(来月に「鏡面堂の殺人}が書き下ろし刊行)
度々名前が登場する「藤天皇」こと「藤衛」や「The Book」など数々の謎を
残したまま。
司を失った百合子ははたしてどうなるのか。
鏡面堂の殺人も楽しみです。


教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)

教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/09/14
  • メディア: 文庫



教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)

教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/09/14
  • メディア: Kindle版



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図書館の殺人 [青崎有吾]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

九月の朝、風ヶ丘図書館の開架エリアで死体が発見された。被害者は常連利用者の男子大学生。
閉館中の館内に忍び込み、山田風太郎の『人間臨終図巻』で何者かに撲殺されたらしい。
現場にはなんと、二つの奇妙なダイイングメッセージが残されていた! 
警察に呼び出された裏染天馬は独自の捜査を進め、一冊の本と一人の少女の存在に辿り着く。
一方、風ヶ丘高校では期末テストにまつわる騒動が勃発。袴田柚乃たちは事件とテストの二つに
振り回されることになり……。
ロジカルな推理と、巧みなプロットで読者を魅了する〈裏染天馬シリーズ〉第4弾。

青崎さんの<館>シリーズ第4弾。
ダイイングメッセージなど意味がないと断言する天馬。
その言葉の裏には、相変わらず極めて合理的かつ精緻な推理が構築されており、
かつ、犯人である条件を一つずつ、まさに理詰めで構築していく様はお見事。
犯人は今までのシリーズの中でもかなり意外な感じでした。

ただし、天馬の推理は相変わらずですが、今回いきなり警察は天馬を招集したのは
情けない。いやもう物語の都合上なのかもしれませんけど。

柚乃との「仲」も別に双方ともに何も思っていない(?)ので、どうにかなるわけでも
ないのでしょうけど、微妙な感じがもどかしい気もします。
また柚乃が天馬の過去に迫っていきますが、この話はそこまで掘り下げる必要が
あるのだろうかと思います。まだ高校生だしなあ・・・
偏屈な探偵、というのを創り上げた時点で、中々本格+青春ミステリとはいかないものの、
重心を過去よりも柚乃との関係に置いてほしいと思うのは私だけでしょうか。

次の<館>はどこになるのでしょうか?
そろそろ閉ざされた館や孤島の館が登場するのを少し期待しています。


図書館の殺人 (創元推理文庫)

図書館の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: 青崎 有吾
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/12
  • メディア: 文庫



図書館の殺人

図書館の殺人

  • 作者: 青崎 有吾
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/01/29
  • メディア: 単行本



図書館の殺人 裏染シリーズ (創元推理文庫)

図書館の殺人 裏染シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/14
  • メディア: Kindle版



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本日は悲劇なり [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

早朝の教室で女子高生が原因不明の自殺をした。レポーターとして事件の取材をしていた白木は、
少女の死を喜ぶ級友や嘘の発表をする学校に興味を抱き、自殺の原因を探り始める。
調査を進めるうちに、何者かの妨害を受けながらも、少女の遺書を教師が隠したという噂を知る。
真相究明のため遺書を探し出そうとする白木だったが…。少女の自殺の裏に隠された真相とは。
驚愕の結末の表題作他1編収録。

表題作はマスコミの各報道への極めて皮肉のこもった作品。
スクープを見つけるために手段を選ばない白木の行動は自業自得でしょうが、
女子高生の「遺書」をどうすべきだったかは、今なら学校の対応が問われる気もします。

「1/2の我が家」は社宅の妻が自治会長に、会社の夫が課長に、それぞれの生活に
転機が訪れた所から始まる物語。
表題作より最後は救われる話ですが、このラストが赤川先生らしい。



本日は悲劇なり (角川文庫)

本日は悲劇なり (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



本日は悲劇なり (角川文庫)

本日は悲劇なり (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: Kindle版



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世界推理短編傑作集 1 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

欧米では、世界の短編推理小説の傑作集を編纂する試みが、しばしば行われている。
本書はそれらの傑作集の中から、編者の愛読する珠玉の名作を厳選して全五巻に収録し、
併せて19世紀否ばから1950年代に至るまでの短編推理小説の歴史的展望を読者に提供する。
本巻には推理小説の祖といわれるポオから、ドイルを経て20世紀初頭のフットレルまでを収め、
最初期の半世紀を俯瞰する。

そもそも旧版を未読(絶版?)というミステリ好きなのに申し訳ありません。
新版では誰もが知るポオの「盗まれた手紙」とドイルの「赤毛組合」が新たに収録されています。
新潮文庫などでポオの作品は復刊していますし、ドイルはどの出版社でも読めますが、
確かに解説の「画竜点睛を欠く」というのは一理ある。
ミステリをあまり読んだことのない人が本書を手に取るとはあまり思えませんが、
そういう人たちにはこの2作品は良いかもしれません。

江戸川乱歩は奇妙な味に重きを置く作品として「赤毛組合」を挙げていますが、
(謎の構成に重きを置くには「唇のねじれた男」)
まさに正鵠を得るとやはり感じます。このトリック(というか設定でしょうか)は
実に見事だし、読者を物語に一気に惹き込みます。

収録作では、隅の老人が活躍する「ダブリン事件」、<思考機械>の異名を持つ
ヴァン・ドゥーゼン教授の本格密室推理「十三独房の問題」
キャサリン・グレーンの「医師とその妻と時計」が印象に残りました。

隅の老人は恥ずかしながら初読ですが、ずいぶん饒舌だなあという第一印象(笑
ある会話から犯人を導き出すのですが、言われてみれば!と感心しました。
しかし、老人は裁判を傍聴に行っているんですよね。
これは安楽椅子探偵になるのかとちょっと思いました。

「十三独房の問題」はあまりにも見事すぎる作品。
完全密室を思考機械のドゥーゼン教授がいかに脱出するのか。読み応え充分です。

「医師とその妻と時計」はハウダニットの先駆的作品ではないでしょうか。
盲目の医師、そしてその妻の感情が非常に繊細かつ詳細に描かれており、
登場人物は少ないながらも、物語に惹き込まれました。

第2巻もそろそろ読み始めます。



世界推理短編傑作集1【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集1【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/07/12
  • メディア: 文庫



世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)

世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)

  • 作者: ウイルキー・コリンズ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1960/07/24
  • メディア: 文庫



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恐怖の報酬 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

こんなはずじゃなかったのに――。平和な日常が反転する傑作短編集。

大切な来客の駐車場を確保しそこなった昭子。年下の課長から毎日嫌がらせを受ける定年間際の柳井。
公園でガラの悪い男たちに絡まれ、一緒にいた彼氏に置いていかれた友子。
アイドルと共に強盗の人質になった銀行員・明美。
窮地に陥った4人はそれぞれ差しのべられた救いの手を取ろうとするが……。
信じていた日常に裏切られた人間の、もろさとしたたかさを容赦なく描き出す、傑作短編集。

ホラー文庫らしい作品群です。
その中でも救いがある話は第3話「最後の願い」
ラストも最後にまた娘に会えて、会田もうれしかったのではないでしょうか。
もちろん、危害を加えようとしたことは後悔しているかもしれませんが。

第1話は主人公の昭子がプラスマイナスゼロと言っているように、
良いこともあれば悪いこともある、で終わらないところがすごい。
何かと頼りにしてきた三橋とのドライブから、一気に別の物語になったかのようです。
しかもラストは昭子までもがその世界に慣れているところが怖い。

「使い走り」は寺岡の自業自得な話の気もするのですが、
星野貞代が柳井が亡くなった直後に自殺していたという衝撃の事実と、
それが明らかになっても、課の誰もが感動して受け容れたという事実、
さすがに背筋が寒くなりました。感動的にも捉えられるし、恐怖とも捉えられる、
なんとも言いがたいラストです。

一番後味が悪いのは最終話「人質の歌」
とにかく救われる人は誰一人いません。
そして、強盗人質事件にかこつけて悪巧みをする輩たち。
途中、強盗犯とは違う殺人犯が登場するという、犯人のバトンタッチが行われるのは、
極限状態だからなのかと思いきや、実は最後でまた明かされる意外な真相。
とにかく誰一人として救われない物語です。


恐怖の報酬 (角川文庫)

恐怖の報酬 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



恐怖の報酬 (角川文庫)

恐怖の報酬 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: Kindle版



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悪意の夜 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

夫を事故で喪ったアリスは、亡夫の書斎でミス・ラッシュという知らない女性の名が
書かれた封筒を見つける。そこへ息子のマルコムが、美女を伴い帰宅した。
美女の名前はラッシュ……女性が去ったのち、封筒も消えていた。彼女は何者で、
息子に近づいた目的、夫の死との関連は? アリスの疑惑と緊張が深まるなか、ついに殺人が……。
迫真のサスペンスにして名探偵による謎解きミステリでもある、ウィリング博士もの最後の未訳長編。

マクロイという作家は序盤の叙述で、読者を物語に惹き込むのが抜群に上手いと思います。
本書も、夫が遺した封筒、書かれていた女性の名前、息子のガールフレンド、
そして「彼女は私の娘ではない」というミス・ラッシュの父親の発言等々・・・
主人公のアリスがパニックになるのは必然ですね。

この辺りは前回読んだ「牧神の影」にプロットが似ています。
序盤の展開、容疑者の少なさ、夫(伯父)が最後にしていた仕事・・・

ただし、「牧神」と違うのは、ウィリング博士が登場するのと、物語の終幕でしょうか。
個人的にはもう少しミス・ラッシュには見せ場を与えて欲しかったなと思います。
その辺りの話が夫の手記(封筒に入っていた書類)で明らかにされますが、
もう少し彼女に語らせても良かったなあと。

ウィリング博士の最後のセリフ「それでいいのです」が印象的でした。




悪意の夜 (創元推理文庫)

悪意の夜 (創元推理文庫)

  • 作者: ヘレン・マクロイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/08/22
  • メディア: 文庫



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