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許されようとは思いません [芦沢央]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「これでおまえも一人前だな」入社三年目の夏、常に最下位だった営業成績を大きく上げた修哉。
上司にも褒められ、誇らしい気持ちに。だが売上伝票を見返して全身が強張る。
本来の注文の11倍もの誤受注をしていた―。躍進中の子役とその祖母、
凄惨な運命を作品に刻む画家、姉の逮捕に混乱する主婦、祖母の納骨のため寒村を訪れた青年。
人の心に潜む闇を巧緻なミステリーに昇華させた5編。

またまた久しぶりの更新です。このところ堕落した日々で、精進しなければなりません。
以下、ややネタバレ。




芦沢さんの著書は『今だけのあの子』以来2冊目。
どの物語もラストの一捻りが実にうまく、傑作短編集です。

「目撃者はいなかった」は誤発注をごまかすため、修哉が取った行動は
成功したかに見えたのですが、交通事故の目撃者となってしまい・・・
死亡した運転手の妻が修哉に対して取った行動が、
夫と同じ目二合わせることという、これ以上ない報復。
言えば自分のミスが明らかに、言わなければ放火犯に・・・どちらを選んでも
彼にとっては地獄です。
明らかになっていく

「姉のように」は、本書所収作では一番のどんでん返し作品ではないでしょうか。
最初に虐待による事件記事を載せ、最後にまた別の事件記事を載せているのですが、
物語は、実にうまくこの点がミスリードされています。
もう少し深読みすると、自分の子どもが犯罪者の姪、になってしまうこと、
さらに彼女は姉へ育児の相談などをしていたこと、この2つも
彼女が事件を犯してしまった理由にもなっているのかとも。

「絵の中の男」はある画家の一生を語る物語。
彼女が描いた絵に隠された秘密が明かされていきます。
本作のみ一人称で語られている異色作ですが、
絵が描かれていく過程、あまりに強烈でした。

表題作は最後の最後に少し救いのある物語になっています。
個人的には主人公の恋人による名推理?が印象に残りました。



許されようとは思いません (新潮文庫)

許されようとは思いません (新潮文庫)

  • 作者: 芦沢 央
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/05/29
  • メディア: 文庫



許されようとは思いません

許されようとは思いません

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/06/22
  • メディア: Kindle版



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世界推理短編傑作集5 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

珠玉の推理短編を年代順に集成し、一九六〇年の初版以来版を重ね現在に至る『世界短編傑作集』
を全面リニューアル! 最終巻となる本巻にはアリンガム「ボーダーライン事件」をはじめ、
ベントリー「好打」、コリアー「クリスマスに帰る」、アイリッシュ「爪」、
パトリック「ある殺人者の肖像」、ヘクト「十五人の殺人者たち」、ブラウン「危険な連中」、
スタウト「証拠のかわりに」など珠玉の名作を収録!


以下、ややネタバレあり。


本書がついに最終刊。
アリンガムの名探偵アルバート・キャンピオンシリーズは初読。
何年か前に短編集が刊行され、あれが結構気になっていました。
本作『ボーダーライン事件』は読んで字の如く、トリックもまさにボーダーラインという
中々に面白いです。
似たようなのが「踊る大捜査線」でもあった気がしますが、あれはものすごく意図的ですが(笑
短編集、欲しくなりました。

ベントリーの『好打』は、大胆なトリックを用いた先例とでも言うのでしょうか。
物語上ですでに振られていますが、僕も単に落雷と思ってました(笑

『爪』はおおよその予想がつくものの、このラストの余韻含め、
後世のミステリに与えた影響は大きいのではないでしょうか。
完全な解決ではないものの、真実を読者にそれとなく告げていて、それでいて
物語の登場人物は真実に行き着いたか不明であるという、簡単そうで
難しい表現だと思います。

『十五人の殺人者たち』は謎に包まれている、とある会合での出来事。
現在はこんなことすら行われず、隠蔽に走るというのはなんとも情けない話です・・・。

『危険な連中』は本書では個人的に一番オススメ。
ミステリというよりサスペンスなのですが、登場人物の、ある意味ムダな(笑)心理戦が
素晴らしい。そしてラストの締め方も皮肉が効いていて、実に面白いです。

「妖魔の森の家」はカーター・ディクスンによるHM卿の事件簿ですが、
恥ずかしながら、こちらも初読。ディスクンそのものを初読なのですね。
この事件は、かつて起きた少女の消失トリックの謎を解き明かすのが卿の役目
なのですが、現実におきた少女の「消失」をも解き明かすところはさすが。
しかし、この明かされた真相はタイトルに相応しい内容だと思います。

完結は寂しいものの、改めて現在の作家さんたちによる傑作短編集の
刊行を願いたいですね。



世界推理短編傑作集5【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集5【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: 文庫



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